情報の出し方を自分でコントロール
データの民主化を掲げるジャスミーにとって、あくまでもデータの民主化は、「自分のデータを自分でコントロールする」ことにある。「作り出したデータが自分のものであると思う人や、自分のデータを誰かに提供している人にとって、データの主権は自分にあります。法律的にも明確なことです」(佐藤氏)。その一方で、佐藤氏が少し危惧していることもある。「データの民主化という言葉は使い勝手が良く、社内のデータを上層部だけが利用するのではなく、皆で共有しましょうといった場合に使われることが多くなっています。これは本来の意味でのデータの民主化とは異なっています」。
本来の意味でデータの民主化が実現されると、どのようなことが実際にできるようになるのだろうか。佐藤氏は、「データの見せ方、出し方によって、どのように情報を提供するかを自分がコントロールできるようになります」と語る。実は、アナログの世界では私たちが意識せずに使い分けている情報の提供の仕方を、デジタルの世界でも同様に実現できるようにすることでもある。「路上でシャンプーの試供品を差し上げますという代わりにアンケートに回答するとき、人は真剣には回答しません。しかし、同じような内容でも、病院の問診票ならば真剣に記入します。マッチングアプリなどでも、相手に気に入られたいときはいい情報だけを出したりします。情報を自分でコントロールしているわけです。こうしたデータのコントロールを、ジャスミーはIoTプラットフォーム上で実現しています」。
ジャスミーが提供するプラットフォームの「Jasmy IoT Platform」では、(1)ソリューション、(2)ブロックチェーン技術を用いたIoTプラットフォーム、(3)データの送受信を担うIoTデバイス、(4)開発環境やデータ分析環境――を提供する。このJasmy IoT Platformは2つのコアサービスが支えている。1つがSKC(Secure Knowledge Communicator)で、生活の中で生まれる様々な個人に帰属するデータを、個人のものとして安全に一元管理できるもの。もう1つがSG(Smart Guardian)で、IoT機器をセキュアに独自ブロックチェーン網に登録し、持ち主のユーザーしか使用できない環境を提供するものだ。
これらのコアサービスは、ブロックチェーン技術によって支えられている。しかし、ジャスミーでは自社でブロックチェーンの技術を開発しない。「日進月歩で発達するブロックチェーンは、自社で技術を持つのではなく、依って立つものとして活用するスタンスを採っています」(佐藤氏)。同様に、データを保管するデータベースも、「分散ストレージや分散環境に適しているとうたうデータベースがありますが、現時点では未発達だと感じています。より良いソリューションを提供するために、現在はクラウドストレージを採用しています」と、汎用的な基礎技術の上で高い価値を提供するソリューションの深化に力を入れる。