Kaede

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(写真:PradeepGaurs / shutterstock

交通渋滞と出稼ぎ労働者によって伸びるデリバリー市場

Stastiaのデータによれば、インドの食品デリバリーの市場規模は、今後4年間で2倍に成長するとされている。デリバリー市場がこれほど大きな進展を遂げる背景には、都市の過密化が関係するようだ。これを契機にインドでギグワークにまつわる日本人も現れた。インドのテックシティ・バンガロール在住のKaede氏が実情をレポートする。

Updated by Kaede on May, 8, 2023, 5:00 am JST

地方からの出稼ぎや日雇い労働者がギグワーカーに

デリバリーサービスの供給において、核をなすのがギグワーカー(インターネット経由で単発の仕事を請け負う労働者)の存在である。インドのデリバリーサービスを支える配達員は、企業との雇用契約を結ぶギグワーカーだ。

インド政府のシンクタンク、NITI Aayogのレポートによれば、インド国内に、2021年時点で約700万人のギグワーカーが存在。2030年までに2,000万人になる見込みである。1人で複数企業のデリバリーを請け負っているギグワーカーも多い。

インドの都市部では、地方からの出稼ぎや日雇い労働者が多い。彼らはスマホさえあれば、デリバリーアプリに配達員として登録し、配達時には二輪シェアライドサービス(※1)のレンタル自転車やバイクを使い、すぐに仕事を始め、収入を得ることができる。インドでは、1万円台で購入できる低価格スマホが販売されており、モバイルデータ通信もとても安い国であるため、ギグワーカーになるためのハードルは極めて低い。(※2)
自分の二輪車を持っていなくても、スマホひとつで、誰でもギグワーカーになれるのだ。

(※1)電動バイクレンタルの「Yulu」、電動スクーターレンタルの「Bounce」 など、インドの都市部には電動二輪車のスタートアップがいくつかある。
(※2)インドは世界でもっともモバイルデータ通信価格が安い国であり、1GBあたり約15ルピー(25円)である。

インド都市部で見かけるギグワーカー(食品デリバリーアプリZomatoの配達員たち)。(写真:papai / shutterstock

ギグワークエコノミーの成長を見据え、インドで起業した日本人も

こうしたギグエコノミーの成長トレンドを見据え、インドで起業した日本人もいる。インド在住の手嶋友長氏が起業した「OkayGo」では、ギグワーカーがEC・配達業などの仕事を即時探せるプラットフォームを提供する。時間帯ごとに仕事の需要変動が激しく、十分な収入を得られないといったワーカー側の課題と、安定した人材確保が難しいという事業者側の課題の双方の解決のためのサービスだ。

ギグワークは、開始のハードルが低く、柔軟な働き方で効率的に収入を得られる一方で、ギグワーカーの労働環境の悪化や低賃金、社会保障や福利厚生の不備も問題視されている。インド各地で、最低配達料の引き上げなど、待遇改善要求やストライキなども起きており、2020年制定の政府の社会保障法(The Code on Social Security)では、ギグワーカーの福利厚生に関する項目が盛り込まれている。

ギグワーカーは日本でも増えており、インドで起きている事例は近く日本でも起こりうるかもしれない。