森本 裕子

森本 裕子

(写真:Jasmin Reuter / shutterstock

イスラエルとパレスチナの子どもを友だちにしたオンラインゲーム

テックは紛争問題の解決にも一役買うことができそうです。オンラインゲームがイスラエルとパレスチナの子どもたちをつないだ例を紹介します。

Updated by Yuko Morimoto on May, 18, 2023, 5:00 am JST

マインクラフトするだけで、紛争関係を超えた友だちになれる?

しかし、直接会わないオンラインでの接触で、本当に偏見は減るのでしょうか? しかも、単にゲームをするだけで?

こうした疑問を解消するために、2021年、ハイファ大学のベナトフ氏らは、Game for Peaceプロジェクトと連携し、オンラインゲーム、具体的にはマインクラフトを一緒にプレイすることが、本当に紛争地域における偏見を減らすかを調べました※5。

ハイファ大学のあるハイファは、人口の9割がユダヤ系、残りがパレスチナ系という、イスラエルでは珍しい混合都市です。ところが、まさに研究実施中の2017年1月、ハイファに住むパレスチナ人がユダヤ人住民1人を殺害し、もう1人に重傷を負わせるという事件が起きたために、ユダヤ人とパレスチナ人の関係は非常に悪化していました。

参加者は、パレスチナ人とユダヤ人の小学6年生です。民族を超えて混合チームを作り、コンピュータを通じてチャットをしながら協力的にマインクラフトをプレイしてもらいました。それぞれ、自分たちの言語であるアラビア語とヘブライ語を使えば、自動的に翻訳されるようになっていたので、スムーズなコミュニケーションが可能でした。仲良くなってから、ユダヤ系の6年生が中心となってパレスチナ系の6年生を自分たちの小学校に招いたり、大会が終わったあとにはパレスチナ系の6年生がユダヤ系の6年生を自分たちの小学校に招いたりすることもできました。

民族を超えたチームでゲームをプレイした6年生は、途中で上記の悲しい事件があったにもかかわらず、相手の民族への偏見を大きく減らしていました。また、子どもたちは、相手の民族の子どもたちともっと一緒に遊びたいと思うようになっていたのです。そしてこれらの効果は、6ヶ月後も持続していました。一緒にマインクラフトをすることを通じ、彼らは紛争関係を超えた友情を築いていたのです。