佐藤秀明

佐藤秀明

鎌倉か京都か忘れてしまったが、20年も前の写真だ。赤い傘の記憶が残る。

(写真:佐藤秀明

雨の日にしか見えない世界がある

写真家・佐藤秀明氏によれば、日本の風景には雨に濡れることで見えてくる美しさがあるという。雨が引き出した日本の景色の魅力を見てみよう。

Updated by Hideaki Sato on June, 9, 2022, 9:00 am JST
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喜雨。蒸し暑さが雲とともに去り、涼しさが降りてくる。
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睡蓮もまた雨の花。睡蓮の睡は眠るという意味。夕方には花弁を閉じて眠りにつく。とても雨が似合う花。
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竹下通りの傘の波。人とすれ違う時は反対側に傘を傾げるのがマナー。でもここには反対側にも人がいる。
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日照り続きの町を歩いていて、夕立に出会う。逃げ込んだ古いお寺の山門に降りかかる雨。
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足元には水溜り。頭上には水滴を乗せたヤツデの葉。シトシトと長く降り続ける女梅雨。
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四万十川の梅雨。この地方の雨は恐ろしい勢いで降り続くことがある。軒先に非難用の船がぶら下がっている家もある。
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10年ほど前、疎水橋に訪れた日は雨が降っていた。そして今、また雨の日に此処に居る。
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本郷界隈の路地裏に降る雨。ささやかな植木や花を鮮やかに色濃くしてくれる青梅雨だ。

雨に魅せられた僕は、雨を撮り続け、ついには雨を題材にした本を出した。詩人の高橋順子さんと一緒に出版した『雨の名前』(2001年 小学館)では400種以上の雨の名前とともに各地の雨の風景を紹介した。

僕が見ているのは落ちてくる雨そのものだけでなく、濡れることで出てくる世界だ。そこには、独特の美がある。

もちろん、晴れている日は気持ちがいい。けれど、雨の日には雨の日にしか見えないものがある。それを写し出したくて、僕は梅雨の日にもレンズを構え続けている。

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梅雨時の花といえばアジサイ。子供の頃は、アジサイの花はあまり好きではなかった。雨水をたたえて垂れ下がった花をいつも避けて通ったものだ。だが、今ではこの時期になるとアジサイが気になって仕方がない。
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山野を潤す恵みの雨、膏雨(こうう)。
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四万十川では夕立を「サダチ」という。サダチが来たら畔を切れという諺がある。田に雨水がたまらないように。それほどまでに激しく降る。