Modern Times編集部

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(写真:Macrovector / shutterstock

データグラビティ(Data Gravity)

「データグラビティ(Data Gravity)」とは、収集したデータがIT資産を引き寄せる力のことです。詳しく解説します。

※2022年11月11日に公開したものをアップデートしました。

Updated by Modern Times on December, 16, 2022, 5:00 am JST

「データグラビティ(Data Gravity)」とは、あたかも質量のある物質同士が万有引力の法則に従って引き寄せ合うように、情報システムにおいてデータが引き寄せ合う現象を表す言葉です。日本語では「データ重力」とも表されます。データが蓄積されると、そのデータの量に従って”重力”が発生し、他のデータやIT資産を引き寄せられることを示しています。

例えば、Eコマースを提供している事業者には、顧客の情報や商品購買履歴などの情報が集まります。これらのデータを集積することで高度なデータ分析が可能になり、ビジネスが拡大して、いっそう顧客や商品のデータが集積します。すなわち、データグラビティによって、データが集まってくるのです。

その上、データの集積はそれを処理するアプリケーションやサービス、コンピューティングリソースなど、あらゆるIT資産をデータの近くに配置することを要求します。すなわち、データグラビティが引き寄せるのは、データそのものだけでなくIT資産全般に及ぶのです。結果として、データが持つデータグラビティにより、情報システムの多様なリソースが偏在化することになります。

データグラビティで企業が80%のデータを所有へ

データグラビティによるデータの偏在化は、特に企業のイノベーションや顧客満足度の充実、さらには世界規模で各企業の収益性に影響を及ぼす可能性があると指摘されています。MCデジタル・リアルティが2021年3月に発表したDigital Realtによる「Data Gravity Index(DGx)レポート」では、2025年までに世界中のデータの約80%を企業が持つと予測しています。

同じく、DGxレポートでは独自のデータグラビティスコアを算出していて、東京は世界でロンドンに次ぐ2位にランクインしています。同レポートの中で、東京は2024年までに、製造業、医薬品、化学品、卸売業でデータグラビティスコアが世界トップになり、コンピューター、エレクトロニクス業界で2位、銀行、金融サービス、保険業、小売業部門でも第3位になると予測されています。

一方で、データグラビティによりデータが偏在化することは、データの自由な利用や流通を阻害するリスクもはらんでいます。データが他のデータやIT資産を引き寄せるデータグラビティの影響を考えるとき、例としてクラウドサービスの利用シーンがわかりやすいでしょう。

企業がクラウドサービスの利用にメリットを見出して、データを特定のクラウドサービスに蓄積するようになると、データグラビティの効果によって、IT資産が特定のクラウドサービスに集中するようになります。特定のクラウドサービスに集中することでデータ活用が効率的できる効果が期待できる半面、クラウドサービスに囲い込まれたデータを他のリソースで活用することが難しくなるリスクが生じるのです。

データグラビティの効果は、データを集めて有効に活用する視点からはメリットになりますが、個々の企業や個人がデータを自由に制限なく活用する視点からはデメリットになる可能性があることを念頭に置くことが求められます。

データグラビティから自由になるには?


データグラビティにより引き起こされる制約を受けずに、自分のデータを自由に活用するにはどうすればいいのでしょうか。まず、データそのものと、それを処理するためのアプリケーションやサービスを分離して考えます。そして、データは利用するアプリケーションやサービスからアクセスでき、必要なときに処理やコピーができる場所に保管しておくのです。

クラウドサービスを利用してデータを蓄積する場合は、そのクラウドサービスがマルチクラウドに対応しているかを検討します。オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドから接続が可能であれば、データが存在する場所にかかわらず、最適なアプリケーションやサービスを利用することができます。

 また、データを外に持ち出すことが困難になる「データロックイン」のリスクがないかも予め検討しておくべきでしょう。データロックインとは、データ基盤を乗り換えようとする際、スイッチング・コストが現実的な値を超える状況を指します。例えば、あるクラウドサービスにデータを蓄積し、そのデータ活用のために分析に最適な別のサービスを利用しようとしたところ、データ転送が必要になった。ところが、データを元のクラウドサービスから持ち出すためには、データ転送料などのコストが膨れ上がり、実質的にはデータを持ち出せないといった状況のことです。

データを自由に持ち出す方法

Neutrix Cloud Japanが提供するクラウド接続ストレージサービスは、オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドから接続でき、データの自由な活用を可能にする代表的な選択肢と言えます。自由にアプリケーションやサービスを選択することができるため、データが持ち出せないという理由だけで最適でないシステムやサービスを使う必要がなくなります。

 Neutrix Cloudはアウトバウンドへのデータ転送料を設定しておらず、オープンな状態で自身のデータを保持することができます。データロックインされない基盤を持つことは、データグラビティに振り回されず、戦略的なデータ活用をする上で必要不可欠となっていくでしょう。

【参考情報】
企業成長に影響を与えるメガトレンドであり、デジタルトランスフォーメーションにとって、最大の課題となるデータグラビティとは(MCデジタル・リアルティ)
Data_Gravity_Index_Report