「MEC(Multi-access Edge Computing)」とは5Gネットワークにおいて、端末(ユーザー)により近い位置にサーバーを配備する仕組みです。5Gの3つの特徴である“高速・大容量”“低遅延”“多接続”のうち、主に低遅延を実現するための技術です。ローカル5G端末やWi-Fi機器、IoT機器などからのアクセスを想定したエッジコンピューティング(エッジサーバー)の規格です。
モバイルに特化した規格
最近のサーバーはクラウド上に設置されることが多く、端末とはインターネットを介して通信するのが一般的です。端末とサーバーの間の距離が遠くなることで通信に遅延が発生してしまい、リアルタイム性が必要なサービスを実現する場合に問題となることがあります。特に、映像データなどの大容量のデータを扱う解析システムを利用する場合、現場でのレスポンスの遅延や通信量の増加が課題となります。そこで、インターネットに出る前の社内ネットワークやローカル5Gネットワークといった、より端末に近い場所にエッジサーバーを構築することでレスポンスを早めて低遅延を実現します。
単にエッジコンピューティングと言った場合、端末自体または端末の近くに分散配置され たサーバーでデータの処理・分析することを指します。一方、MECはETSI(European Telecommunications Standards Institute:欧州電気通信標準化機構)が標準化を進めるエッジコンピューティングの規格の一つであり、主にスマートフォンやIoT機器などのモバイル機器からの利用を想定したエッジコンピューティング技術です。つまり、エッジコンピューティングはネットワークコンピューティング技法を指す言葉で、MECはそのなかでもモバイルに特化した規格を指す言葉になります。
自動運転やIoTの実現に欠かせない通信規格
MECでは、モバイル端末やIoT機器などで発生したデータを、クラウド上のサーバーにすべて送らずに、より端末に近い部分で処理します。そのため、処理に対するレスポンスが早く、クラウド上のサーバーからの応答を待つよりも高速な処理を実現します。例えば、従来では処理時間に加えて発生していた数百ミリ秒程度の遅延が、MECでは数ミリ秒程度に削減することが可能です。