空港には管制塔が必ずあるわけではない
報道各社の3月3日付けのニュースによれば、大阪府・大阪市は、大阪市港区の大阪港エリア、城東区の森之宮エリア、此花区の桜島地区の3カ所に、空飛ぶクルマの離着陸場を設置する方針を固めたとのことです。大阪・関西万博では、「関西エアポート」の筆頭株主であるオリックスが関西空港から万博会場への送客を計画しており、今回報道があった他の3カ所との間にも空飛ぶクルマ専用の空路を設定する可能性が高いと見られます。
空港には管制塔が必ずあるわけではありません。日本国内には空港が97カ所ありますが（ヘリポート、軍用飛行場を除く）、航空管制官は航空機の離着陸が一定程度ある約30の空港にのみ配置されています。つまりその他の60ほどの空港には、管制塔から航空管制官が指示・情報提供を行う航空管制業務が提供されていません。パイロット自身が滑走路の離着陸や地上走行における安全の全責任を負っているということです。
空飛ぶクルマの離着陸場”スカイポート”も現状の仕組みから考えると、機数が少ないうちは管制塔や航空管制官はいない前提で運用することになります。運用方法としては、ヘリコプターに近くなることでしょう。ヘリポートへの離着陸や、救急搬送のドクターヘリの基地などでは、ヘリコプター運航会社の運航管理者が、航空無線で航空管制官のような役割を果たしている場所もあります。
スカイポートには中央管理機能、そして状態監視機能が必要
大阪・関西万博ではJAL、丸紅、SkyDrive、ANA及びJoby Aviationの4グループが空飛ぶクルマの運航事業者に選出されており、複数の機体がスカイポートを使用することが見込まれます。関西空港からの送客は、国際線のフライトや万博の目玉イベントなどに合わせて、数機が同時間帯に飛行することになるかもしれません。運航が輻輳した場合でも安全と効率を維持す るためには、スカイポートに位置情報・気象情報を共有する中央管理機能、離着陸場の状態監視機能が必要と考えられます。
当面はパイロットが直接操縦するか、遠隔操縦であっても常時外界が監視できている状態で運航が承認されることが現実的です。つまり、パイロットは上空においても離着陸場においても、自身が目で見てインプットした情報を基に飛行の判断をすることになります。飛行計画に沿って運航しつつ、他機がどのような飛行を行うか状況認識を図ることで予想をしながら、様々な判断を行うわけです。
異なるアビオニクスのシステムプログラムで飛行する機体同士が相互に情報共有することは、技術的にも規格統一の観点からも困難に見えます。しかし、スカイポートに位置情報を共有する中央管理機能を整備すれば、各機がスカイポートのサーバに接続し運航情報を集約することが可能です。さらに、地上面の風向・風速等の気象情報をデータベースに付加し、離着陸の順位付けとその時間を割り当てることで、全体最適なスカイポート運用が実現できます。
（▲例えばこのような見た目になるシステムを使って、一元的に空飛ぶクルマの「状態」がわかるようにすることが望まれます）
パイロットが目視で詳細な状況把握を行う工夫も必要です。上空から離着陸場にいる他機を視認した際、その機体は着陸したばかりなのか、これから離陸するのか、旅客の乗降中なのか、あるいは充電が切れて動けない状態なのかなど、どのような状態にあるのか正確に知ることで、自機の飛行に予測が立てられるようになります。そのためには、離着陸場に高解像度カメラまたはセンサー等を設置し状態監視を行うか、離着陸場を使用するパイロット自身が何らかの信号を送る仕組みの構築が求められるでしょう。
空飛ぶクルマが電動ヘリコプターとの違いを明示するうえで、無人での自動操縦は欠かせないと筆者は考えます。その離着陸場であるスカイポートについても同様に、将来的な自動操縦を地上から支える仕組みまで見据えた設計が求められるでしょう。
参照リンク
国土交通省 航空：航空管制官公式
『空飛ぶクルマ』離着陸場の3候補地決まる「大阪城公園駅東側」「USJ南の桜島」「海遊館西の中央突堤」
「空飛ぶクルマ」の離着陸場 ＵＳＪ・大阪城・海遊館付近を候補地に 万博会場～森之宮エリアを９分で結ぶ 関西空港にも整備予定
