森本 裕子

森本 裕子

(写真:Martyshova Maria / shutterstock

次のパンデミックへの備えは充分?あなたを助ける「ホラー映画」

データを参照することで見えてくる人の心の不思議な動き。今回は、ホラー映画がもたらす予想外の効用について紹介します。

Updated by Yuko Morimoto on September, 5, 2023, 5:00 am JST

ホラー映画の楽しみ方は2種類ある

ホラー映画はお好きでしょうか。私は基本的には苦手なのですが、サイコホラーだけはわりと好きです。ホープ大学のジョンソン氏によれば、ホラー好きには2種類のタイプがいるらしく、一つは映画の主人公に共感しながら恐怖を楽しむスリルウォッチャータイプ、もう一つはむしろ共感は低く、流血やバイオレンス、破壊の激しさを楽しむゴアウォッチャータイプだそうです※1(ちなみに、「ゴア」とは流血や暴力、殺人のことです)。この分類で言うと、私はさしずめスリルウォッチャータイプになるのでしょうか。

タイプはともあれ、ホラー映画が好きだという方はけっこういらっしゃることでしょう。リージェンツ大学ロンドンのマーティン氏によれば、実際にホラー映画は世界的に人気があり、興行成績もいいらしいのです※2。人はなぜこんなにホラー映画を好むのでしょうか。スリルを感じてドキドキする以上の、実用的な効果があったりするのでしょうか?

シカゴ大学のスクリブナー氏らは、ホラー映画を観ることによって、ホラー映画に似た状況に対して事前に備えられるのだ、と主張しています※3。とはいえ現実世界では、テレビから幽霊が出てきたり、大量のゾンビに襲われたり、チェーンソーを持った殺人鬼に追われたりすることはほとんどないでしょう。そうした具体的な状況にではなく、もう少し抽象的に、襲ってくる相手からはどうやって逃げるかとか、世界が変わってしまったときにはどう対応するべきなのかといった心構えを、私たちはホラー映画から学んでいるのではないか、というのです。