井上顧基

井上顧基

(写真:Olivier Le Moal / shutterstock

2023年の生成AIはどのように投資を促したのか

2023年は生成AIの普及年となり、著しい量の投資やM&Aが行われた。一体どのような動きがあったのか、ハイライトを紹介する。また2024年の予測も掲載。新たな年の計画づくりに役立ててほしい。

Updated by Koki Inoue on December, 26, 2023, 5:21 am JST

海外における投資・M&A

AIスタートアップ、特に生成AIアプリケーションに焦点を当てた企業は注目を集めている。これらの企業は、ベンチャーキャピタルや企業投資家から180億ドル以上を調達し、技術評価の低迷期にあってもVC業界にとって大きな救いとなっている。MosaicMLとDatabricksの13億ドル、CasetextとThomson Reutersの6億5000万ドル、InstaDeepとBioNTechの5億6200万ポンドという大型M&A取引が行われており、AI分野で活発なM&A活動が見られる。

企業投資の傾向として、2023年の企業ベンチャーキャピタル投資のうち24%がAI企業に向けられたことに注目。これは、AI企業への投資が他の分野と比較しても大きな割合を占めていることを示している。さらに、生成AI企業は、大規模AIシステムのトレーニングのために必要なクラウドコンピューティング能力の獲得に向けて、メガファンディングラウンドを支配している。2023年には、生成AI企業が他のスタートアップに比べて、シードおよびシリーズAラウンドでより大きな資金を受け取る傾向にあった。

日本における投資・M&A

海外でも同様に生成AIに対するVCによる投資が加速している。Generative AI特化ファンドの創設なども見られ、さらなる加熱が予想される。2023年初頭では、画像生成AIへの期待が高まっていたが、年末にこれほどLLMへの関心が高まっていることを予想できる者はおそらくいなかった。2024年も変化が激しいと予想され、VCは大きなキャピタルゲインを獲得するためにドメイン知識や構造的な戦略を持つベンチャー企業に投資する必要がある。興す事業がバズワードが散りばめられたものや過度なマーケティングで成り立つものではなく、高度な技術やデータ増加によって、ビジネスとして成功するかどうかも重要な投資のポイントである。

2024年の予測

2024年の予測では、大きく海外と日本という括りで予測する。見方的には日本が海外、特に米国に対して1年ほど遅れて追従しているような状態である。

海外

海外では、特に医療分野でMed-PaLMなどのドメイン特化LLMが既に知られている。日本に比べてドメイン特化LLMの開発が進んでおり、今後もその傾向が続くと予想される。

1. 汎用型LLMからのドメイン特化LLM開発
2. クリーンで少数の学習データを用いての学習
3. マルチモーダルなLLMアプリケーション
4. MoEタイプのLLM
5. Transformer以外のアーキテクチャの台頭

日本

日本では、海外の動向に追随し、大規模なLLMの開発が進行中であり、2024年もこの傾向が続くと予測される。また、日本のAI規制は、主に法的拘束力のないソフトローに焦点を置いており、具体的なケースごとの法律解釈が進展していくと考えられる。

1. パラメータ数がGPT-3程度の大規模なLLM開発
2. 生成AIの活用ケースごとの法律解釈の深化

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