井上顧基

井上顧基

(写真:Sergey Nivens / shutterstock

LLMが変えたPoC。今や企業は容易に実現可能性をはかることができるように

企業が新たな事業やプロダクトを始めるにあたっては、実現可能性の検証が欠かせない。かつてはこれに莫大なコストがかかったが、現在は低コストで容易に行えるようになった。理由はLLMの台頭だ。元AIのリサーチエンジニアであり、AIベンダーの経験もある井上顧基氏が解説する。

Updated by Koki Inoue on February, 20, 2024, 5:00 am JST

すでに一般的になりつつある概念、PoC

PoCについて、読者はどのようなイメージを持っているだろうか。PoCとはProof of Conceptの略であり、その直訳は「概念実証」である。読み方は「ピーオーシー」あるいは「ポック」とされることが多い。日本語に訳すと理解しづらいかもしれないが、ようはアイディアが実現可能かどうか確認する検証作業のことである。PoCはAI業界や大企業で新規事業を担当する人々にとっては、既に一般的な用語となっている。

PoCを実行する理由は、LLM以前の世界ではAI開発には莫大な費用が必要だったからである。もちろんLLM開発自体がPoCの場合は、それ自体が莫大な費用を要する可能性がある。現在では、自然言語を扱う簡単なMVP(最低限の機能を実装したプロダクト)であれば、ChatGPTの機能を用いたGPTsで数時間程度で作成が可能になった。しかし、LLM以前ではAI開発だけで数カ月を要し、費用も1,000万円を超えることは珍しくなかった。開発・運用を含めた場合、費用はさらに増え、億単位となることもあったため、担当者にとっては失敗が許されない状況だった。そのため、実現可能性を確認する必要があったのである。

LLMによるPoCはまだ課題が多い

OpenAIが提供するLLMモデルのGPT-4のみを利用しても、自然言語処理に限れば、AIを簡単に作ることが可能だ。しかし高性能にすることを求めたり、費用を抑えようとしたりする場合、様々な検証が必要となる。自然言語以外にも、画像、音声、3Dデータなどを扱う場合はなおさらである。今後、これらのモーダルに対しても、高い解釈性を持つAIモデルが、Metaのようなビッグテックから提供されることが期待されているが、しばらくはPoCを行うことには変わりはない。

PoCは基本的に、事業会社が起点となっている。現代は社内の新規事業やシステム刷新の際にAIが導入されることが多い。事業会社が予算を割り当て、開発メンバーやPMをアサインする。その後、AI部分やAIを含む全体の開発をAIベンダーに依頼し、開発が進められる。しかし、このように進められるPoCは実は失敗に終わってしまうパターンが少なくない。
次回以降はその失敗パターンを紹介するので、ぜひ回避に役立ててほしい。

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