森本 裕子

森本 裕子

(写真:Universtock / shutterstock

「7」は男性、「4」は女性? いつの間にかイメージが出来上がっている、数字のジェンダー

ときに不思議な人の心の動きも、データを参照することで傾向が見えてくることがあります。今回は、人が抱く数字に対してのイメージについて紹介します。

Updated by Yuko Morimoto on November, 14, 2023, 5:00 am JST

男性には「男性っぽい数字」を示した商品の方がよく売れる

テキサス大学のヤン氏は、ウィルキー氏らの研究を発展させ、四捨五入された数字も、細かい数字より女性っぽいとみなされやすいことを発見しました※3。まずはウィルキー氏らと同じく、赤ちゃんと一緒に数字を表示します。その結果、四捨五入された数字と一緒に見せられた赤ちゃん(5時生まれ、50cm、3,000g)は54%の確率で男児だと判断されたのに対し、細かい数字と一緒に見せられた赤ちゃん(5時1分生まれ、47.5cm、2,850g)では74%が男児であると判断されていました。

一般的に、細かい数字は、四捨五入された数字よりも説得力があるとみなされる傾向があります※4。たとえば、「85%の人が効果を実感しています」と言われるよりも、「84.7%の人が効果を実感しています」と言われる方が、説得力があるように感じるのですね。ところが、この効果が「女性っぽい商品」では生じにくい、というのがヤン氏による2つ目の発見です。

ヤン氏の研究に参加した人たちには、育毛シャンプーの情報が与えられました。男性っぽいシャンプーはブルーのボトルで、ブランド名の横に「men」と書いてあり、一方、女性っぽいシャンプーは白のボトルで、「women」と書いてありました。

参加者の性別には関係なく、男性っぽいシャンプーでは、「有効成分マカデソシド1.00%を含む」とか「モニター評価では90.02点と評価された」とか、「早ければ24時間で効果がある」というように、細かい数字まで表記した方が、印象や効果の予測において、好ましい印象を得ていました。

一方、女性っぽいシャンプーでは効果が逆転します。「有効成分マカデソシド1%を含む」とか「モニター評価では90点と評価された」とか、「早ければ1日で効果がある」というように、四捨五入した(あるいは丸めた)数字で情報を示された方が、好ましい印象を得ていたのです。

ヤン氏は、男性っぽい車と、女性っぽい車を使った実験でも、似た結果が得られることを示しています。つまり、一般的に、なにかを売るとき、男性っぽさのあるものの場合には男性っぽい数字を添えた方が、男性からも女性からも好ましく思われ、女性っぽさのあるものの場合には女性っぽい数字を添えた方が好ましく思われるということでしょう。ちょっと古いですが、ニンテンドー64(ロクヨン)なんかは女性っぽいイメージだったのかな? と気になります。

子どもの方が、数字にジェンダーを感じる?

ただし、この感覚は必ずしも全員が同じように経験しているわけではないようです。東京大学の松田氏は、岡山県に住む小学生と大人を対象に調査を行い、小学4年生から6年生、大人へと成長するにつれて、数字にジェンダーを感じる程度が減っていくことを示しています※5。

ただし、松田氏の研究では、それぞれの数字に対応するジェンダーがどちらだったかは検討していません。果たして日本の子どもたちは、どんなふうに数字にジェンダーを感じているのでしょうか。4年生以下のお子さんが身近にいらっしゃるようなら、聞いてみても面白いかもしれませんね。

ちなみに、先ほど日本語圏の小学3年生に聞いてみたところ、「1は男、37は女、64は女」との回答が得られました。うーん、惜しい!

参考文献
※1. Wilkie, J. E. B. & Bodenhausen, G. V. Are numbers gendered? J. Exp. Psychol. Gen. 141、 206–210 (2012).
※2. Heubner, L. et al. A Mental Odd-Even Continuum Account: Some Numbers May Be “More Odd” Than Others and Some Numbers May Be “More Even” Than Others. Front. Psychol. 9, (2018).
※3. Yan, D. Numbers Are Gendered: The Role of Numerical Precision. J. Consum. Res. 43、 303–316 (2016).
※4. Jerez-Fernandez, A.、 Angulo、 A. N. & Oppenheimer, D. M. Show Me the Numbers: Precision as a Cue to Others’ Confidence. Psychol. Sci. 25、 633–635 (2014).
※5. Matsuda, E. , Okazaki、 Y. S. ,Asano、 M. & Yokosawa, K. Developmental Changes in Number Personification by Elementary School Children. Front. Psychol. 9, 2214 (2018).