日本人では「有能そう」は評価されにくい!?
トドロフ氏らの研究はあくまでアメリカの選挙結果を元にしたものです。日本人は、政治家のポスター写真からは影響を受けていないかもしれません。ということで、アメリカの選挙と日本の選挙の結果を比較した研究が行われています※7。そして案の定、日本のデータからも政治家の顔写真が選挙結果に影響していることが示されました。
ただし、興味深いことに、この研究では、アメリカの候補者では、参加者から「有能そうだ 」と評価されるほど実際の選挙で得票率が高かったのに対し、日本の候補者では参加者から「いい人そうだ」と評価されるほど実際の選挙で得票率が高かったという結果が示されています。つまり、アメリカで選挙に勝ちたければ、選挙ポスターでは「有能そう」に見せた方がいいけれども、日本で選挙に勝ちたければ、「いい人そう」に見せた方がいいということになります。
政治家のような、有能さが重視されそうな(そしてアメリカでは実際に有能っぽさが重視されている)職業でも、日本ではいい人っぽさの方が重視されるわけです。あくまで私の個人的な予測ですが、おそらく、他の職業でも、日本では有能さよりいい人っぽさの方が重視される傾向にあるのではないかなぁと考えています。
さてさて、ここまで読んでこられたみなさまは、私のことを信用できると思われたでしょうか? その信用は、能力への信用でしょうか。それとも意図への信用でしょうか。日本で生きている私としては、できれば「いい人っぽい」と思われていますように、と祈っておきましょう。
参考文献
1. 『信頼の構造──こころと社会の進化ゲーム』山岸俊男(東京大学出版会 1998年)
2. Fiske, S. T., Xu, J., Cuddy, A. C. & Glick, P. (dis)respecting versus (dis)liking: Status and interdependence predict ambivalent stereotypes of competence and warmth. J. Soc. Issues 55, 473–489 (1999).
3. Thornton, G. R. The Effect Upon Judgments of Personality Traits of Varying a Single Factor in a Photograph. J. Soc. Psychol. 18, 127–148 (1943).
4. Wang、 Z., Mao、 H., Li, Y. J. & Liu, F. Smile Big or Not? Effects of Smile Intensity on Perceptions of Warmth and Competence. J. Consum. Res. 43、 787–805 (2016).
5. Holoien, D. S. & Fiske, S. T. Downplaying Positive Impressions: Compensation Between Warmth and Competence in Impression Management. J. Exp. Soc. Psychol. 49、 33–41 (2013).
6. Todorov, A., Mandisodza, A. N., Goren, A. & Hall, C. C. Inferences of competence from faces predict election outcomes. Science 308, 1623–1626 (2005).
7. Rule, N. O. et al. Polling the face: prediction and consensus across cultures. J. Pers. Soc. Psychol. 98、 1–15 (2010).