野口諒子

野口諒子

リソースの有効活用とコスト最適化を「リソースプール方式」で実現する

すでに多数の企業が利用に踏み切っているクラウドサービス。しかしそのコストについて不満を抱いている法人は少なくないかもしれない。合理的なシステムでコストを抑えたい場合は、「リソースプール方式」のコンピューティングサービスを検討してはいかがだろうか。

Updated by Ryoko Noguchi on May, 9, 2023, 5:00 am JST

クラウドコンピューティングのメリットは、リソースの過不足に柔軟に対応できること

幅広く利用が進んでいるクラウドサービスには、複数の利用形態があります。その1つであるクラウドコンピューティングは、クラウドサービス事業者が提供したハードウエアリソースの上に、CPUやメモリー、ストレージなどのリソースを割り当てた仮想サーバーを構築して利用します。事業者はインフラを提供することから、この形態をIaaS(Infrastructure as a Service)と呼びます。

ユーザーは、大容量のリソースを備える事業者のデータセンターの仮想基盤の上に、複数の仮想サーバー(インスタンスと呼びます)を必要なスペックで構築し、専用のサーバーとして利用するのです。仮想サーバーのリソースが過不足した場合には、サービスの設定によってリソースの拡張や縮小が可能です。こうした拡張縮小に柔軟に対応できるスケーラビリティや、複数のインスタンスを使った冗長性の確保がクラウドコンピューティング利用の大きなメリットです。

一方で、従来からある物理サーバーは、CPUやメモリー、ストレージなどはハードウエアのスペックによって決まっています。もちろん、物理サーバーのリソースを増設すれば拡張は可能ですが、急な利用拡大に対応することはできません。すなわち、物理サーバーの設計では突発的なピーク時の利用を想定してリソースを用意する必要があります。

多めに見積もって使っていないリソースに従量課金の費用を払うか、都度増強して予算を超えるリスクをとるか

それでは、物理サーバーで構築していたシステムをクラウドコンピューティングに移行するとしたら、どうでしょう。パブリッククラウドの多くは、インスタンスごとのリソースに対して料金を設定しています。従量課金であり、使わないリソースにコストをかけずに済むことを売りにしていますし、スケーラビリティがあるので突発的な利用拡大に対しても対応可能です。すなわち、クラウドコンピューティングの仮想サーバーのリソースの合計値は、ピーク値に合わせた物理サーバー時代のリソースの合計よりも少なく設計できます。クラウドサービスが、物理サーバーよりも低コストで運用できる理由の1つです。

インスタンスごとの仮想サーバーは、それぞれ最大値を決めてあらかじめリソースを割り当てる(プロビジョニングをする)必要があります。スケーラビリティがあるため、物理サーバーのように突発的な利用拡大のピークを想定することなく、日常的な最大値の設定でプロビジョニングが可能です。とは言え、実際のサーバーは、常に100%で稼働しているわけではありません。平均すると10%程度、使用率が高いデータベースサーバーでも50%程度です。物理サーバーよりは効率が高いものの、パブリッククラウドでも普段は使っていないリソースに対して、従量課金の費用を支払っていることになります。

ここで、使用率を低めに見積もってインスタンスごとの仮想サーバーの最大値を設定したとします。従量課金ですから、コストも低めに抑えることができます。しかし、結果的に利用が拡大したときにはインスタンスの増強をしなければなりません。クラウドコンピューティングのスケーラビリティを有効に使ってシステム的には急場を乗り切ったとしても、月末以降にクラウドサービス事業者から請求書が届いて驚くことになるかもしれません。従量課金でインスタンスを増強すると、料金が「使った分だけ増える」わけですから、予算を超えた請求になることも考えられるのです。

すなわち、ハイパースケーラーを中心としたパブリッククラウドサービスの中心的な利用法であるインスタンス型では、インスタンスごとの最大値に余裕を持たせれば無駄なコストを毎月払うことになる一方で、最大値を低めに設定すればピーク値の利用に対して突発的なコスト増加に耐える必要が出てくるのです。