専門領域と課題解決の双方を行き来しながら、価値の創造を学ぶ
――データサイエンス学部で、価値の発見や創造を学ぶために取り組んでいることは。
椎名氏:価値の発見・創造を学生に教えるのはとても難しいことです。ある種の課題感や、現状を変えたいという希望を、実社会に生きていない学生は持ち合わせていないからです。そのため、企業や地方公共団体と連携して、民間や市町村で実際にどのような課題や希望があるかを話してもらい、匿名化した実データも提供してもらって、それらを課題にした演習を実施しています。
――演習は学年が進んでからの取り組みですか。
椎名氏:いいえ、1年生からです。1年生は情報学や統計学の勉強を始めたばかりですから大した分析はできませんが、何らかの課題をデータで解くことを身に着けていきます。3年生、4年生になると、データ収集や分析のレベルが高くなり、「企業から面白い発見だね」と評価され、実際 に課題解決に使ってもらうような価値の発見につながることもあります。世の中にはデータサイエンスを学ぶための例題も多くありますが、生の課題と実際のデータに触れられることは学生のモチベーションにつながっていますし、未解決の問題を解けたときには大きな喜びを感じているようです。
データサイエンス学部での学びは、どうしても情報学や統計学などの「ツール」に相当する専門領域を低学年でたくさん学習して、その後に個別の課題に対応することになりがちです。すると課題への対応の時間が限られてしまいます。企業や自治体と連携した演習を1年生から実施することで、専門領域と課題解決の双方を行き来しながら学習を進めるスパイラル型の理想に少しでも近づけられるようにしています。
――卒業後はどのような道に進んでいますか。
椎名氏:入学するときは、道具としてのデータサイエンス を極めたいと考えている学生が多いようですが、実際に就職したときにデータサイエンティストになるかというと、そうでもありません。総合職として、人事でも営業でも、データサイエンスを勉強した強みを生かしたいと考えた就職も多いようです。ガチなデータサイエンティストになるのではなく、データサイエンスという得意技を使ってゼネラリストとして会社に貢献する方向性です。