大澤夏美

大澤夏美

(写真:a katz / shutterstock

メディアとしてのミュージアムグッズ

ミュージアムで味わった感動を手元に残すことのできるミュージアムグッズ。実はミュージアムグッズは「メディア」としての役割も果たしている。そのパワーをミュージアムグッズ愛好家の大澤夏美氏が紹介する。

Updated by Natsumi Osawa on August, 7, 2023, 5:00 am JST

ミュージアムグッズもメディアなのかもしれない

能美栄子によると、ミュージアムショップが扱う商品は、館が所有するコレクションや、館のロゴ、建築デザイン等の財産を活用して開発した館独自の商品と、専門の卸売業者や他館のミュージアムショップ等から仕入れた既存の商品に大別できる。※8

なかでも筆者は前者の館独自の商品をオリジナルグッズとし、これまで著書などで紹介をしてきた。なぜならそれは、筆者がオリジナルグッズのもつメディアとしての役割に着目しているからだ。

媒体の意を持つメディア。これをミュージアムグッズに置き換え、博物館のコンセプトを伝えるための手段として捉えていく。博物館を訪れる来館者にとっても、ミュージアムグッズは、博物館での経験や思い出を持ち帰るためのメディアになり得る。そう考えると、前述のオリジナルグッズは博物館の財産を生かして開発するため、博物館の魅力が表現されやすい商品といえるだろう。

拙著『ミュージアムグッズのチカラ』シリーズの執筆で、日本全国のミュージアムショップを駆け回ったが、本当に様々なオリジナルグッズが展開されており大変興味深かった。伝統工業とコラボレーションしていたり、地域の産業や民間企業と協同していたり、学芸員などの専門職員のアイデアを積極的に取り入れていたり、SNSでファンの意見を聞き積極的に取り入れていたり。オリジナルグッズを見れば、その博物館がどんな場所なのか、あるいは博物館のある地域はどんな場所なのか見えてくるようであった。

ここでいくつか事例を見てみよう。福岡市博物館は国宝である金印を所蔵しており、印面に刻まれた「漢委奴国王」の五文字は学校の教科書でも習うほど。拙著ではこの金印を気軽に楽しめる金印スタンプを紹介した。その後も新しいオリジナルグッズ開発に力を入れ、所蔵品などをモチーフとしたオリジナルアイシングクッキーや、刀剣をイメージしたアロマパルファン(天然緑茶香水)「刀剣香」も登場した。いずれもSNSで評判となり、企画・製作に携わる福岡市文化芸術振興財団のミュージアムグッズ担当者の積極的な発信も功を奏していると見受けられる。若い層にも博物館に興味を持ってほしい!という想いが聞こえてきそうだ。

福岡市博物館オリジナルクッキー
1,210円(税込み)
刀剣香 圧切長谷部 小(1ml)1,980円(税込)
アロマパルファニスト(調香師)である太田奈月氏とのコラボレーション。

博物館に隣接する地域の学生がミュージアムグッズを開発するプロジェクトも散見される。岡山県高梁市にある高梁市成羽美術館では、岡山県立大学デザイン学部の大学生と協同し、毎年夏に数量限定のミュージアムグッズを販売している。セラミックやテキスタイルなど、学生の専門性と学芸員の専門性が融合した興味深い事例である。大阪府の堺市博物館でも関西大学人間健康学部、経済学部、大学院(人間健康研究科)の学生が企画したミュージアムグッズを販売。販売方法やデザインに至るまで現状分析を行い、その分析に基づいて企画提案が行われた。このように、地域の学生が授業やゼミの一環でミュージアムグッズ開発に取り組むことで、博物館が若者にはどのように見えているのかを映すメディアとしての機能があると考えられる。

シャブティつまようじ入れ
500円
地元の画家・児島虎次郎が留学中にコレクションしたシャブティ(古代エジプトでお墓に入れられていた人形)がモチーフ。
マスキングテープ(南蛮漆器)400円(税込)
西洋の影響が見受けられる、安土桃山時代の国産漆器がモチーフ。

もちろん、すべての博物館がオリジナルグッズを開発できるわけではない。人員、予算、場所の都合で開発が難しい場合もあり、公立博物館であれば儲けを出すことが良しとされない場合もある。そんな中でも、ミュージアムショップ全体の商品構成として、委託商品の力も借りながら工夫をしているところもある。また、グッズの販売が難しい博物館では無料配布という形で、缶バッジやポストカードを配布していることもある。

国内には様々な館種、規模の博物館がある。ミュージアムショップの運営形態も、博物館の直営なのか、別団体や企業に委託するのかなどにもよって異なる。また、ミュージアムグッズの開発者や開発プロセスも多様である。学芸員などの研究や資料に直接携わるスタッフが、どの程度開発に参加しているかも博物館によって様々である。

ぜひ、読者の皆さんも博物館に足を運んだら、ミュージアムグッズに着目してほしい。そして、そこから見える博物館の姿、伝わる魅力も含めて楽しんでみてはいかがだろうか。

※8  能美栄子 2002「ミュージアムショップとは?〜その役割と先進事例〜」『博物館研究』37(11),13.

参考文献等
博物館学事典』倉田公裕監修(東京堂出版 1996年)
新博物館学教科書博物館学III——博物館情報・メディア論*博物館経営論』大堀哲・水島英治編(学文社 2012年)
博物館経営論』12 加藤有次ほか(雄山閣 1999年)
『博物館研究』37(日本博物館協会 2002年)
ミュージアムグッズのチカラ』大澤夏美(国書刊行会 2021年)
文化庁「1.博物館の概要
文化庁「博物館に関する科目について
放送大学「博物館情報・メディア論 講義概要