澁谷紳一郎

澁谷紳一郎

「多くの企業はまだ本当のDXには到達していない」。大量データの高速処理とローコード開発を武器にしたKeepdataのデータ基盤戦略

DX(デジタル変革)は、一時期の流行り言葉というスタンスから、企業にとって必要不可欠なものになりつつある。とは言え、データを活用できるのは部署単位であったり、システムもバラバラで全社的なDXの環境が整っていなかったりというケースは少なくない。
こうした状況をKeepdata株式会社 代表取締役の澁谷紳一郎氏は「データが人質になっている」と表現する。

Updated by Shinichiro Shibuya on August, 8, 2023, 5:00 am JST

Smart Hubでアプリケーションの開発工数が40%削減できる

データ利活用プラットフォームのSmart Hubは、どのようにしてDXに貢献するのか。澁谷氏はその最大のポイントを「大量のデータを高速に解析、集計、抽出、検索ができる性能です。4億件のデータの検索が、これまでのRDBやSQLベースのシステムでは10分かかったところ、Smart Hubなら0.2秒で完了します」と説明する。データ量が多くなればなるほど、高速処理を求められれば求められるほど威力を発揮できる中核技術が、データを自在にハンドリングできる土台になっている。

Keepdata株式会社 代表取締役社長 澁谷 紳一郎氏

その上で、Smart Hubはアプリケーションの開発を容易にすることで、現場のDXソリューション構築を支援する。澁谷氏は「HTMLを書けるスキルがあれば、アプリケーションは簡単に作れます。ユーザーインタフェースとして入力画面やグラフでの出力などの画面を設定し、5つに絞り込んだAPIで機能を選択するだけです」と語る。既存のデータベースシステムを活用するアプリケーションを作るには、SQL文などの知識が必要になる。一方Smart Hubでは、APIの使い方をマスターしてWebサイトを書ける知識があれば、データの入出力からデータの管理画面、ダッシュボード画面、計算、グラフ化などの可視化、特定業務画面などのアプリケーションの作成までできてしまう。HTMLやUXデザインツールのAdobe XD、ノーコードやローコード開発ツールで業務データを利活用しながらサービス向上ができ、DXソリューションをアジャイル開発できるプラットフォームというわけだ。

Smart Hubは、ファイルとフォルダをファイルシステムでデータベースマネジメントを構成している。「RDBやSQLなどの既存のデータベースシステムでは非構造化データの取り扱いや運用が難しいですが、Smart Hubならば構造化データも非構造化データもすべてフォルダとファイルで一元管理が可能です」(澁谷氏)。構造化データも非構造化データでマスターデータを構築しようとするとデータクレジングや名寄せ作業が必要となるが、Smart Hubならクレジングは不要だ。マスター管理する役割のフォルダが、トランザクションデータをファイルに書き出し、フォルダ配下にインデクサーの管理下で保存する。フォルダはファイルを無限に保存できる特性を生かして次々と保存蓄積していくことができ、ファイルから取得するメタ情報や集計、解析、ファイルの全文検索を高速にできるのである。これはSmart Hubならではの特長だという。

セキュリティ面にもユニークさがみられる。「通常のシステムではロードバランサーが必要になるのですが、Smart HubではLinuxのリレーサーバーを配置するだけでIPアドレスを公開せずにアクセスできる特許を取得した仕組みを持っています」(澁谷氏)。現状、様々な機器やソフトウエアを組み合わせることでシステムやネットワークの複雑性が増し、セキュリティホールを潜在的に増やしている企業は少なくない。それに対し、Keepdataは、システム構成を複雑化することなくセキュリティの脆弱性を改善した新しいリレーサーバーシステムとその通信方法開発した。

そうした特徴を生かすことで、アプリケーションの開発工数は40%と大幅に削減でき、保守運用費用もリレーサーバー中心の仕組みでコストを50%と大幅に削減できる効果が得られる。これらのデータマネジメントの機能と高速データ処理の性能をプラットフォームとして提供することで、導入企業は少ない人材と低コストで速やかにアジャイル開発によりアプリケーションを作成できる高速なデータ利活用基盤を手に入れられるのだ。

実際、どのようなケースでSmart Hubが役立つのだろうか。澁谷氏は、こんな説明をする。

「昨今増えている依頼は、全社の業務改善と新規ビジネス創出するためのDX化に向けた個別の製品、顧客などのマスターデータの整備に関することです。個別にカスタマイズされた業務システム、様々なツールや昨今のDXツールは、そもそもデータベースが共通ではなく、肝心のデータがブラックボックス化しています。そんな状況のなかで、DX化に向けてまずはどのようにデータを一元管理するのかという相談を受けています。しかし、弊社からはマスターデータの再統合化はお薦めしません。Smart Hubを使うことで、多様なデータを使ったDXのためのデータ利活用ソリューションを作ることができるからです」

澁谷氏は、具体的な事例として、不動産開発、管理会社で導入が進むケースを紹介する。「導入企業のホールディングス傘下には様々な業務形態の子会社が複数あり、不動産関連の物件管理ソフト、文書管理ソフト、会計ソフト、人事ソフト、給与ソフトなど個別に導入稼動、エクセルで日常業務を管理しています。 ホールディングスとしては全体が俯瞰して把握対応に時間を要しています。さらに昨今ではスマートフォンやタブレットの活用でカメラの動画や画像の非構造化データの取り扱い管理と利活用も課題となっています。しかし、マスターデータの再統合ではなく、これらの各システムからのデータをSmart Hubに入れて、ユーザーインタフェースをアジャイルで開発することで、DX化が推進できます。分散したデータの利活用マネジメントのメリットを生かせるケースです」(澁谷氏)。

ある広告会社では、スマートフォンのアプリから取得したログデータと、店舗などのPOSデータなどの異なるデータを紐づけてマッチングさせて分析結果を抽出する業務で、既存のシステムでは数億件のデータ処理に数時間以上の時間がかかっていた。これをSmart Hubに移行することで、ほぼリアルタイムで分析できるソリューションが出来上がると見積もる。今後のリリースの事例だが、高速処理のメリットを生かせるケースだ。

導入時に考えたい視点として「今の眼の前の仕事がどう変わるか」に注目すべきだと澁谷氏はいう。1時間あたりの生産性を上げて、時間に拘束されずに収益につながる業務をできるように変わるために、Smart Hubプラットフォームを提供するというわけだ。