澁谷紳一郎

澁谷紳一郎

「多くの企業はまだ本当のDXには到達していない」。大量データの高速処理とローコード開発を武器にしたKeepdataのデータ基盤戦略

DX(デジタル変革)は、一時期の流行り言葉というスタンスから、企業にとって必要不可欠なものになりつつある。とは言え、データを活用できるのは部署単位であったり、システムもバラバラで全社的なDXの環境が整っていなかったりというケースは少なくない。
こうした状況をKeepdata株式会社 代表取締役の澁谷紳一郎氏は「データが人質になっている」と表現する。

Updated by Shinichiro Shibuya on August, 8, 2023, 5:00 am JST

スループットを3~4倍、コストを2割減させたストレージ

Keepdataのサービスが提供するオンラインストレージシステムやデータ利活用マネジメントシステムの高速性能は、利用するデータセンターのインフラの性能にも依存する。高速に大容量のファイルのアップロード、ダウンロード、共有できるSmartBiz+高速な解析、集計、検索を売りにするSmart Hubにとって、多くのデータを蓄積するストレージサービスやWebサーバーの性能とコストは、サービスの品質とコストパフォーマンスを維持するためのポイントなのだ。

加えて、データの民主化に向けて、データを利活用する際に必要なメタ情報やタグ情報の扱いにも制限がない環境を提供できることが重要な要素である。

そうした中で、Keepdataでは土台になるインフラの移行を進めている。既存のデータセンター事業者からクラウド型ストレージサービスを提供するNeutrix Cloud Japanのインフラへと移行するというものだ。「ストレージはデータ利活用プラットフォームにとって重要なポイントです。Neutrix Cloud Japanの社長の田口勉氏とは前職にいたころから交流があり、米INFNIDATの技術を用いた高性能のストレージとコンピューティングが可能なサービスを提供していることを聞いていました。そこでまず実証してみることにしました」(澁谷氏)。

既存事業者とNeutrix Cloud Japanのデータセンターに同じ環境を構築して、ストレージの読み出し速度と書き込み速度を検証したところ、「既存事業者に比べて、実用的な負荷をかけた状態で3~4倍のスループットが得られました」と澁谷氏は説明する。SmartBiz+が提供する様々な種類のファイル処理やSmart Hubが提供するデータ解析、集計、検索の時間短縮に寄与する結果だ。その上、トータルでコストは2割ほど下がることがわかった。データを利活用する際に必要なメタ情報やタグ情報の扱いに制限がない環境もあり、KeepdataはNeutrix Cloud Japanのインフラへの乗り換えを進めている。

2023年9月にはファイル共有サービスを、Neutrix Cloud Japanのインフラに移行して提供する予定だ。ファイル共有に世代管理の仕組みを用意してバックアップ用途にも対応する。大容量ファイル送受信の機能も備え、パーマネント機能などコラボレーションにも活用できる。Smart Hubもデータの民主化に向けて9月にリリース、「Neutrix Cloud Japanの技術とサービスを深掘りして、使いやすいDX化の機能を提供していきます」と澁谷氏は語る。

自社のサービスを広げながら、顧客のDXを支援

Neutrix Cloud Japanの環境は、Smart Hubの性能向上とコスト削減にもつながる。Smart Hubはデータ利活用マネジメントプラットフォームとしての提供だけでなく、容易にアプリケーション開発ができる利点を生かして、業務特化や特定用途のクラウド型のサービス提供にもつなげている。勤怠管理や経費精算、工数管理クラウドサービスの「SmartWorkingかんたん記録帳」をこれまでに提供している。

2023年にはDXソリューションとして、不動産資産テックSmartDXサービスや、契約書AI診断DXサービス「Smart LARA」と矢継ぎ早やに提供する。データの民主化に向けた自社のサービスの幅を広げながら、同時に顧客のデータの民主化に向けた企業のDX化を支援していく形だ。