町田英之

町田英之

(写真:branislavpudar / shutterstock

危険な高所作業やウクライナ情勢に伴う穀物価格の上昇。デジタルは日本の畜産農家を救えるか

肉や鶏卵、乳製品など私たちの日々の「食」を支えている畜産業。今、国内畜産業界において、その存続にかかわるような問題が起こっていることをご存じでしょうか。高齢化や後継者不足に加え、飼料価格高騰の影響、2024年問題など、現場はさまざまな問題に直面しているのです。現実的な問題解決方法としてのデジタル技術の活用について紹介します。

Updated by Machida Hideyuki on September, 12, 2023, 5:00 am JST

毎日4〜8mのタンクに登って飼料の残量をチェック。高齢化が進む畜産農家が直面しているリスク

鶏や豚、牛などの家畜を肥育する畜産農家は一日たりとも世話を怠ることができないことから、農業の中でも特に労働環境が厳しく、後継者不足による高齢化が深刻です。農家は毎日の餌やりのためタンクで保管している飼料を切らさないよう残量を把握する必要があり、毎日タンクを巡回しては一基ずつはしごで上り目視でタンク内を確認したり、竹の棒でタンクを叩いたりして確認をしています。
タンクは通常4~6m、大きなものではおよそ8mの高さがあります。大規模な農場には50基を超えるタンクがありますから、雨の日も雪の日もタンクに上る作業は農家にとって大きな負担であるうえ、高所での作業は危険が伴います。

加えて現在はウクライナ情勢に伴う穀物価格の上昇等に伴い配合飼料価格が上昇しており、経営的にも厳しい状況が続いています。畜産経営にかかる費用の6割弱が飼料代といわれていますので、輸入飼料に頼る日本においてこの飼料高騰は大打撃です。後継者不足問題と重なり、廃業する農家も後を絶たない状況です。
また営農を続ける農家も物価の低い現在の日本では飼料の上昇分を販売価格に転嫁できず、とても苦しい経営状況が続いています。そのため経費を無駄にしないよう、飼料管理の重要性が増してきているのです。