町田英之

町田英之

(写真:branislavpudar / shutterstock

危険な高所作業やウクライナ情勢に伴う穀物価格の上昇。デジタルは日本の畜産農家を救えるか

肉や鶏卵、乳製品など私たちの日々の「食」を支えている畜産業。今、国内畜産業界において、その存続にかかわるような問題が起こっていることをご存じでしょうか。高齢化や後継者不足に加え、飼料価格高騰の影響、2024年問題など、現場はさまざまな問題に直面しているのです。現実的な問題解決方法としてのデジタル技術の活用について紹介します。

Updated by Machida Hideyuki on September, 12, 2023, 5:00 am JST

現実的な問題解決方法としてのスマート農業

スマート農業という言葉が聞こえ始めておよそ5年以上経過し、搾乳現場や鶏卵工場ではデジタルを活用した多くの取り組みが進められています。一方で家畜を肥育する畜産現場はデジタルに対してまだあまり馴染みがありません。だからこそ畜産業界のさまざまな課題に対し、デジタルで何ができるのかを伝えていくことが大切です。デジタル技術の活用によって、働き方改革・生産性向上により畜産業界の環境負荷を低減し、サステナビリティ向上にも寄与できる。そうした未来を描きつつ取り組む必要があるのです。

畜産業界をめぐる状況は厳しさを増していますが、飼料の残量を確認するための新しいソリューションも誕生しています。YEデジタルでは、飼料残量の可視化に特化した製品「Milfee」を開発。高精度な計測でタンクサイズや飼料形状を問わず残量の可視化しました。外出先から携帯電話などを使って、離れた場所からも飼料の残量が確認できるというものです。

飼料残量を可視化する「Milfee」

このデータを飼料販売メーカー、飼料配送業者も共有することで農家だけではなく、畜産業界の業務効率化につながります。
農家では、毎日飼料残量を確認するための危険作業がなくなり、さらに餌切れを起こす心配が無用に。飼料メーカーでは、農家からの急な注文がなくなるため、計画的な飼料製造が可能となります。
飼料輸送業者においては、飼料輸送の前に飼料残量を確認するための複数回に及ぶ遠距離走行がなくなります。

また、「Milfee」導入によって飼料輸送車の走行距離を減らすことができた事例もあります。北海道の事例では、飼料の残量確認・補充にかかる走行距離は、車両1台あたり6,000km/月だったものが、4,000km/月に削減でき、CO2の排出量削減にもつながりました。
環境問題への取り組みは、いま世界各国でおこなわれ、特に地球温暖化の原因と言われている「CO2排出量の削減」に向けた動きが注目されている中、効率のよい輸送を促進することが重要です。