Kaede

Kaede

バンガロールにある「NURA」。市内中心部、富裕層も多く住むエリアにある(筆者撮影)

(写真:Kaede

最先端テクノロジーを用いてインドに「予防医療」を普及させていく。日本企業発の健診センター「NURA」体験レポート

実は、生活習慣病大国であるインド。そんなインドで、ある日本企業が世界最先端の技術を用いて検診センターを設立した。実際の体験レポートを紹介する。

Updated by Kaede on August, 28, 2023, 5:00 am JST

富士フイルムが開設した健診センター「NURA」

富士フイルムは、2021年2月、インド南部の都市、バンガロールに健康診断センター「NURA(ニューラ)」を開設した。翌年2022年にはグルガオン(首都デリー近郊の都市)、ムンバイにも拠点を開設し、現在インドに3拠点を構える。健診患者は中間層や富裕層が中心で、主に口コミで評判が広がり、受診者は3拠点で述べ1万人を超えるという。

インドにおける「NURA」の強みは、最新の医療機器とAIを組み合わせた最先端の技術を用いていること、そして健康診断がたったの2時間で完了できることである。

健康診断が普及している日本よりも効率的。高額だが、幅広い層の人が訪れるように

NURAの健康診断は「事前予約制」で、バンガロールの拠点では、1日に約30人が受診できる。
1回あたりの費用は、拠点によって違い、15,000~20,000ルピー(約24,000~32,000円)である。インド現地の病院が提供する一般的な健康診断と比べると高額ではあるが、中所得層~富裕層まで、幅広い層の人が利用しているという。

検査項目は、血圧測定、心電図、聴力、視力といった定番の項目に加え、肺や内臓の状態を調べるCTスキャン、骨密度を測定するDEXA、口腔がん、大腸がん、内臓脂肪、皮下脂肪を調べる体組成の検査などが受けられる。女性の健診メニューには、乳がんを検査するマンモグラフィー検査や、子宮頸がんの検査も含まれている。各検査には、富士フイルム社の細心の医療機器が使われている。これらの機器の多くは、日本から移送したそうだ。

NURA内で利用されている、富士フイルム社製のCTスキャン装置(筆者が見学時に撮影)
NURA内で利用されている、骨密度検査用の装置(筆者が見学時に撮影)

グルガオンの健診センターでは、慢性閉塞性肺疾患や心筋梗塞のリスクを早期に発見するための生活習慣病の検査も実施されている。

健診の最後には、医師による検査結果の説明がある。デスク上のスクリーンで、当日撮影したX線画像やCTスキャンの画像などを見ながら、診断結果の説明を受けられる。

一連の検査から検査結果の説明までは2時間で完了する。
診断には、同社が開発する最先端の技術が使われている。例えば、AIによる画像解析技術を用いた医師の診断補助、AIや画像データの集約システムなどには、富士フイルム社が開発した独自技術が使われている。

診断結果レポートは、当日中に受診時に登録したメールアドレスに送信され、スマートフォンやPCでダウンロードできる。数日後には、レポート冊子が自宅住所に郵送される。健診結果は、受診者毎にNURAのデータベースで管理され、受診者は毎年健診を受ける度にデータを比較することができる。

検査結果のレポート状にあるQRコードを読み取ると、詳細データがPCやスマートフォンで確認できる(筆者撮影)

日本の健康診断は一般的には診断結果レポートは郵送で、しかも結果が出るまでには数週間かかることも少なくない。すでに健康診断が普及している日本と比べても、インドで展開されているNURAは非常に利便性が高いといえる。