森本 裕子

森本 裕子

(写真:Martyshova Maria / shutterstock

気がついたら「変な買い物」をしていない?スマホに潜む意外なリスク

データを参照することで見えてくる人の心の不思議な動き。今回は、スマホがもたらす知られざるメリット、デメリットを紹介します。

Updated by Yuko Morimoto on September, 19, 2023, 5:00 am JST

30分待たされる実験にいくら支払ってほしい?

みなさま、この記事をなんのデバイスでご覧でしょうか。多くの方はスマホから見ていらっしゃるのではないかと思います。令和3年度の総務省 情報通信白書によると、2020年のインターネット利用率は83.4%で、スマートフォンによるインターネット利用率が68.3%、一方、パソコンによるインターネット利用率が50.4%とのことです※1。いまやスマホはインターネット利用の最大派閥でもあるのですね。

もちろん、スマホはインターネット利用以外にも使えます。なんならスマホさえあれば退屈せずに長い時間を過ごせますね。ワシントン州立大学のランドリアマーロ氏らは、30分間実験室でただ待たされる場合に、参加者が支払ってもらいたいと考える金額を調べました。スマホごと持ち物を一時的にすべて取り上げられ、なにもすることがない場合は17.91ドル(約2,500円)支払ってもらいたいと答えた参加者たちでしたが、一方、スマホを手元に残してもらえた場合には、11.18ドル(約1,500円)で良いと回答していました※2。スマホさえあれば、退屈な待ち時間でも許せるというわけです。

反対に、スマホがない場合には高額をもらわないと割に合わない、と言い換えることもできるかもしれませんね。実際、17.91ドルというのは、参加者の時給の2.7倍だったそうです。スマホ禁止はちょっとした拷問に近いのでしょうか。カリフォルニア州立大学のチーバー氏らは、スマホを取り上げられた実験参加者の反応を次のように報告しています※3。

普段からヘビーにスマホを使っている参加者は、スマホを取り上げられると、時間が経つにつれどんどんと不安を膨らませていきました。一方、普段あまりスマホを使っていない参加者では、不安の程度に変化はありませんでした。この研究では、スマホのヘビーユーザは、たとえ近くにスマホがある状況でも、スマホの電源が切れていて、自分の視界に入らない状態にされると、スマホを取り上げられたときと同様に、どんどんと不安を膨ませていったことが示されています。

スマホ依存とも呼べるかもしれないこの状態ですが、逆に、スマホを肌身離さず持ってさえいれば、ある程度は安心できるのだとも言えるでしょうか。次ページではスマホと安心感についての研究をご紹介しましょう。