森本 裕子

森本 裕子

(写真:Universtock / shutterstock

他人の顔を覚えない人は、自分を「偉い」と思っている?

データを参照することで見えてくる人の心の不思議な動き。今回は、社会的地位と「他人の顔を見ること」の関係を紐解きます。

Updated by Yuko Morimoto on October, 17, 2023, 5:00 am JST

「偉い人」は他人の顔を見ない

さて、それでは反対の視点から考えてみましょう。他人の顔を見る頻度は、誰でも同じなのでしょうか。それとも、自分が偉いかどうかが他人の顔を見る頻度を変えるのでしょうか。

ニューヨーク大学のダイツ氏らは、Googleストリートビューからニューヨークの街の写真を取得し、参加者に見せたところ、低い社会クラスの参加者と比べ、高い社会クラスの参加者では、写真の中の人物に目を向ける時間が短かったよという結果を報告しています。どうやら人は偉くなると他人への興味が低下するようだ、ということがわかります。

ダイツ氏はさらに、市内を歩いていた人に声をかけ、グーグルグラスを装着して約1分の間近くの道を歩いてもらい、それぞれの人が顔を向けた先になにがあったかをグーグルグラスで録画しました※4。その結果、やはり自分が高い社会クラスだと思っている人ほど、周りの人物に視線を向ける時間が短かったのです。

あなたはいかがですか? 街を歩くとき、周りの人を見ているでしょうか。私は……たぶん、割と見ているのではないかという気がするのですが、しかしながら、他人と比べたことがないのでなんとも言えないところです。誰かに調べてみてほしいですね。

さてさて、それはそれとして、研究は繋がっていきます。ダイツ氏は、偉い人はあまり他人を見ていない、他人に興味がない……ということは、結果的に、顔の記憶にも違いが出てくるのではないかと考え、別の共同研究者たちと、次の研究を行いました。