中村航

中村航

1980年代、インドのコルカタ(当時はカルカッタと呼ばれていた)で撮影。家族を乗せて走るリキシャ。写っているのは自転車を使ったサイクル・リキシャだが、人力だけで走るリキシャもある。

スポーツの本質は応援にある

DXで起きることはただのICT化ではない。それは生活基盤、人との関係、肉体の構造、社会のあり方などありとあらゆるものを変えていく。スポーツもその一つだ。ここではNFTによるスポーツ業界の変化を紹介する。

Updated by Wataru Nakamura on January, 24, 2022, 0:00 pm JST

ブロックチェーンの可能性

国内外のスポーツ界でテクノロジーを活用した変革の取り組みが進められる中で、ここ数年期待が高まっている技術の1つがブロックチェーンだ。ブロックチェーンは「ビットコイン」などの仮想通貨の基幹技術で「分散型台帳」とも呼ばれる。インターネットなどオープンなネットワーク上で高いセキュリティや改ざん耐性、透明性を実現でき、幅広い用途に応用できる技術だ。特にスポーツ業界においては、このブロックチェーンを応用したNFTとファントークンという2つの技術・仕組みが盛り上がりを見せている。

NFTとスポーツ業界

NFTは「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略称。ブロックチェーンを利用してデジタルデータに唯一無二の価値を付与する技術で、当初はアートやゲームなどの分野で活用されてきた。特に2021年になってから市場が急拡大し、Reutersによれば、2021年上半期のNFT取引量は前年同期比で200倍近い約25億ドルまで拡大したという。

スポーツ業界におけるNFTの代表的な活用事例といえば、カナダのDapper Labが2020年10月にスタートしたNFTトレーディングカードサービス「NBA Top Shot」が挙げられる。NBAの選手たちのプレー動画が記録されたデジタルトレーディングカードを収集・売買できるこのサービスは、発売から1年で7億ドル(約800億円)以上を売り上げたという。なお、Dapper Labは昨年9月には米NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)ともNFT事業での提携を発表している。また、日本国内では2021年8月、JリーグがNFTを活用したゲームの提供でライセンス契約を結んだことを発表。同12月にはプロ野球のパ・リーグがメルカリと共同でのNFT事業の開始を発表していた。

新たな資金調達手段となるファントークン

一方、ファントークンはスポーツチームなどが発行するブロックチェーンを用いた一種のデジタル資産で、スポーツ業界の新たな資金調達手段として注目を集めている。このトークンは購入者の需要に応じて価格が変動し、チーム運営に関わる意思決定への投票権や限定プロモーション・VIP体験などの報酬が付与されることも一般的だ。2021年8月のBloombergの報道では、欧州の主要なサッカークラブがファントークンの発行で調達した金額が2億ドル(約230億円)を超えたという話も伝えられていた。

ファントークンについては、バスケットからF1、総合格闘技団体、eスポーツまで、多くのスポーツチームが発行しているが、最も事例が多いのはサッカークラブだろう。たとえば、2020年6月にスペインのFCバルセロナが発行した「BAR」というファントークンは発売から2時間足らずで売り切れとなり、同チームは130万ドル(約1億5000万円)を調達したという。また、2021年8月にそのバルセロナのスター選手であるリオネル・メッシがフランスのパリ・サンジェルマンに移籍するという噂が浮上した際には、同チームの「PSG」というファントークンの価格が急騰。その後、この移籍が実現した際には、同選手が契約金の一部を「PSG」で受け取ったことも話題になっていた。なお、国内のプロスポーツチームでは、昨年1月にJリーグの湘南ベルマーレが初めて発行している。

カメラに微笑む山岳地帯の女性
ネパール・グルカの女性。グルカの男性は傭兵として働きに出ることが多く、村では女性たちが活躍している。「世界最強」と言われることもあるグルカ兵は、特に山岳地帯で本領を発揮。インド大反乱でイギリスに雇われたことからその名が知られるようになった。