中村航

中村航

1980年代、インドのコルカタ(当時はカルカッタと呼ばれていた)で撮影。家族を乗せて走るリキシャ。写っているのは自転車を使ったサイクル・リキシャだが、人力だけで走るリキシャもある。

スポーツの本質は応援にある

DXで起きることはただのICT化ではない。それは生活基盤、人との関係、肉体の構造、社会のあり方などありとあらゆるものを変えていく。スポーツもその一つだ。ここではNFTによるスポーツ業界の変化を紹介する。

Updated by Wataru Nakamura on January, 24, 2022, 0:00 pm JST

価格上昇よりファンコミュニティ強化が重要

NFTとファントークンは現在、基本的には専用のマーケットプレイスや取引所で売買が行われている。しかし、スポーツ関連であっても仮想通貨のように価格変動が大きなことから転売目的で購入する人も多いのが現状だ。これらを購入することで純粋に競技やチームを応援したいという人にとって、このような購入者の存在はあまり嬉しいものではないだろう。また、業界としても「転売で稼ぎたい」という動機と「競技やチームとの関わりをより深めたい」という動機の購入者では、後者が多いほうが健全なファンコミュニティの形成につながることは間違いない。もちろん、NFTやファントークンの購入をきっかけにファンになる人も一定数はいるだろうが、転売目的の購入者が多数を占める状況が続けば、要のファンコミュニティが冷めてしまう可能性もある。

新たな応援の形に

NFTやファントークンは、より没入的な体験やゲーミフィケーション機能、チームの意思決定への参加といった要素で、ファンとスポーツを新たな絆で結ぶ技術として活用されるべきだ。この意味では、サッカー・ベルギー1部リーグのシント=トロイデンVVのように「シーズンチケットの特典としてトークンを付ける」といった取り組みは大いに検討されるべきだろう。一方、これらの技術はアスリートとファンの関係にも変化をもたらす可能性がある。たとえば、まだまだ無名のアスリートが個人でトークンを発行し、活動費を募るといった動きも増えてくるのではないだろうか。トークンを介することで、通常のクラウドファンディングより一歩進んだ継続的な支援が可能となり、応援コミュニティへの参加やトークン保有数に応じた特典など多様なリターンの可能性が生まれていくだろう。

参照
【beINcrypto】NFTs and Fan Tokens Are Reshaping the Sports Industry
【Reuters】NFT sales volume surges to $2.5 billion in 2021 first half
【CoinDesk】FC Barcelona’s Token Sale Hit $1.3M Cap in Under 2 Hours
【beINcrypto】Fan Tokens Bring Millions to Top Football Clubs
【Bloomberg】Crypto Tokens Net Top European Soccer Clubs Millions: Report
【株式会社OneSports プレスリリース】国内初、NFTを活用したJリーグオフィシャルライセンスゲームを提供
【coindesk JAPAN】メルカリ、プロ野球パリーグとNFT事業──2次流通市場は2022年以降
【Forbesjapan JAPAN】投機か、コミュニティか? サッカークラブとNFTとファントークンの未来