森本 裕子

森本 裕子

(写真:Martyshova Maria / shutterstock

神経質な人はよく○○と書いている

DX社会できっと役立つ、とっておきの心理学を紹介。今回は、SNSがいかに人の内面を丸裸にできるかを考えてみます。

Updated by Yuko Morimoto on February, 8, 2023, 5:00 am JST

Facebookは情報を丸裸にする

みなさま、オンラインでさまざまに情報発信していらっしゃるのではないかと思います。そうした情報から、あなたがどういう人か、じわじわとわかってしまうと聞いたらどう思われるでしょうか。いえいえ、通っていた高校や、住んでいる地域などの、いわゆる個人情報がバレる、という話ではありません。もっと深く、あなたの性格の特徴から、なんと親が同居しているかまで、どこにも書いていないはずの情報が推測できるというお話です。ちょっと怖いなと思いませんか?

元々、ウェブのブラウジング履歴から、ある程度、その人の特徴やパーソナリティが推測できるというのはわかっていました。ウェブで見たサイトから、あなたが何歳の男性あるいは女性だという情報が推定されて、それに合わせた広告が表示されるようになっていますよね。どうやらたまに間違われるみたいですが、それはそれ。

これに対して、それよりもっと簡単なデータから、その人がどういう人かを推測してみようというアイデアを2013年に検討したのが、ケンブリッジ大学のコシンスキー氏とその共同研究者たちです※1。みなさまご存じのFacebook。Facebookの記事にはいいね機能がついています。このいいね履歴だけから、その人がどういう人かが推測できないだろうか?というわけです。

まず、AかBかどちらか、という二択のテーマから。性別は93%の正確さで推定されました。ちなみにいいね1回でも50%以上の正確さで推定できます。安易にいいねできません。続いて、喫煙者かどうかは73%、お酒を飲むかどうかは70%の正確さで推定できました。そのくらいは、タバコ情報にいいねするかどうかで簡単にわかるよな、と思いますよね。ここからが本番です。恋人や配偶者がいるかいないかについては67%の正確さで、同性愛かどうかは75〜88%の正確さで推定されました。これは割といい精度ではないでしょうか。そしてそれより驚きなのは、21歳時点で両親が同居していたかどうかが、なんと60%の正確さで推定できるというのです。Facebookでいいねしただけなのに、そんなことまでわかってしまうとは。

続いて、年齢のように、連続的に変化するものを予測してみました。まずは年齢。年齢では、推定された年齢と実際の年齢の類似度が75%でした(正確には、相関係数が .75 でした)。年齢によって、いいねするものが随分違うんですね。それから、性格については、推定値と実際の値は、30〜40%程度の類似度でした。まあまあまあ、という感じです。ちょっと怖いのは知能についてで、いいねだけから推定した知能が、実際の知能と39%の類似度だったそうなのです。

ちなみに、Facebookの文字データを分析した研究※2では、高台に住んでいる人は山の話をよくしているとか、神経質な人はよく「うんざり(sick of)」と書いているとか、そういう結果も報告されています。私自身はこういう、「当たり前」の結果が楽しくてしょうがないのですが、それはさておき、面白いのはそこから先で、どうやら「情緒的に安定した人はアクティブな生活を送っているようだ」というような、これまで誰も考えていなかったような関係も示されました。著者らは、こうしたデータを使って、人間の頭で考えうる範囲からだけではなく、データが自然と示す新しい視点からも、人間をより深く知っていこうよ、と主張しています。

デジタル情報で予想以上にあなたがわかる

どうも欧米ではFacebookが人気なようで、Facebookの研究が多いのですが、それではInstagramはどうでしょうか。Instagramをご利用の方も多いでしょう。写真しか投稿していないし、載せる写真も、個人情報がバレないように吟味しているから大丈夫? タフレシュ・イスラム・アザド大学のコラーミ氏らは、Instagramの写真の「内容」からではなく、写真の「色」だけから、性格が推定できるという研究を報告しています※3。もはや逃げ場はないような気がしてきました。

こうなってくると、人間が他人の性格を推定するよりも、些細な情報からコンピュータが推定する方が精度がいいのではないかとも思えます。実際に、Facebookのいいねを分析した方が、友達が性格質問紙に答えるよりも、本人の回答と近いというデータも報告されています※4。友達よりもコンピュータの方が、あなたをわかっているのでしょうか。それどころではありません。「本人が」答えた性格質問紙からその人のネットワークサイズなどを予測するよりも、Facebookのいいねからその人のネットワークサイズなどを予測する方が、精度高いケースも(ほんの少しですが)あったそうです。この研究が行われたのが2015年ですから、テクノロジーが発展した今となっては、もしかしたら、あなたよりもコンピュータの方が、あなたの行動を予想できるようになっているかもしれません。

FacebookもInstagramも使わず、Twitterで最新の論文情報ばかりを呟いている私は、いったいコンピュータからどんな人だと思われるのか、少し気になるところです。

参考文献
1. Kosinski, M., Stillwell, D. & Graepel, T. Private traits and attributes are predictable from digital records of human behavior. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 110, 5802–5805 (2013).
2. Schwartz, H. A. et al. Personality, gender, and age in the language of social media: the open-vocabulary approach. PLoS One 8, e73791 (2013).
3. Khorrami, M., Khorrami, M. & Farhangi, F. Evaluation of tree-based ensemble algorithms for predicting the big five personality traits based on social media photos: Evidence from an Iranian sample. Pers. Individ. Dif. 188, 111479 (2022).
4. Youyou, W., Kosinski, M. & Stillwell, D. Computer-based personality judgments are more accurate than those made by humans. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.112, 1036–1040 (2015).