佐藤秀明

佐藤秀明

地平線の太陽とワタスゲたち。

(写真:佐藤秀明

美しくも恐ろしい北極の花々

写真家・佐藤秀明氏は幾度も北極へ向かい、その大自然を写真に収めてきた。意外に思われるかもしれないが、北極でも花は咲く。しかもその数は年々増えているという。そしてその美しさは、実は恐ろしい真実を伝えている。

Updated by Hideaki Sato on February, 2, 2023, 5:00 am JST
Pedicularis langsdorfii
Pedicularis langsdorfii。鮮やかなピンクの花を咲かせる。
アークティック・ポピー
光が注ぐなかに立つアークティック・ポピー。
ヤナギランと白い花
晴れ空に咲くヤナギランと白い小花たち。
ムラサキユキノシタ
ムラサキユキノシタは北極を代表する花。カナダにあるイヌイットの自治区、ヌナブト準州の州花でもある。
ワタスゲ
風になびくワタスゲ。雲が集まっているかのよう。

北極圏のツンドラでは、2018年までの30年で夏に摂氏約1度、冬に1.5度平均気温が上昇。植物の背がよく伸びるようになった。植物に降り積もった雪は断熱材となり、冬に土壌が急速に固く凍りつくのを緩和するようになった。つまり、この美しい花たちは凍土を溶かす手伝いをしている。

凍土には大量の炭素が蓄えられている。凍土が溶けることでそれらが放出され、空気中の温室効果ガスは一層増えることになる。するとさらに凍土が溶け、植物たちの生息域が拡大し、さらなる凍土の溶解につながる……。美しい花々は実は恐ろしい真実を告げ、またその現象に加担しているのである。

一面咲きのムラサキユキノシタ
地面に這うように咲くムラサキユキノシタ。
タンポポ
タンポポ。水辺の陽だまりに咲く。
風を避けるようにしてさくアークティックポピー
風を避けるようにして咲くアークティック・ポピー。
Pedicularis langsdorfii
Pedicularis langsdorfii。日本の日常ではまず出会えない花。
ムラサキユキノシタで一面赤く染まった大地
ムラサキユキノシタで一面赤く染まった大地。
ヤナギラン
ヤナギラン。空を見上げているかのよう。
チャボクモマグサ
チャボクモマグサ。北極域に分布する可愛らしい花。
アークティックポピーと青
空の青にアークティック・ポピーの黄が映える。
ムラサキユキノシタ
水に浮かぶムラサキユキノシタ。
ムラサキユキノシタ
寒々しい岩肌をムラサキユキノシタがひっそりと彩る。
アークティックポピー(北極ひなげし)
アークティック・ポピー(北極ひなげし)。アークティックは”北極の”という意味。その名の示すとおり、凍原に咲く。
アークティックポピーの大群落
アークティック・ポピーの大群落。
ムカゴユキノシタとアークティックポピー
アークティック・ポピーにムカゴユキノシタが寄り添う。
コケマンテマ
コケマンテマ。鞠のようで愛らしい。
アークティック村と草原の花々
アークティック村と草原の花々。
ささやかに咲く
気温の低い場所では、花もささやかに咲く。
岩の割れ目から咲くヤナギラン
岩の割れ目から咲くヤナギラン。
タカネマンテマとアークティックポピー
タカネマンテマとアークティック・ポピー。

参考
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0563-7