芙和せら

芙和せら

(写真:Julija Ogrodowski / shutterstock

高齢者も褒められたい、出会いたい。超高齢社会の落とし穴「社会的フレイル」を予防する

超高齢社会において、人々の幸せの総量を減らさないためにできることの一つが、要介護人口や要介護の度合いを高めないことである。そのための第一歩が「社会的フレイル(虚弱性)」の抑制だ。芸術療法によって、高齢者が社会的フレイルに陥らないための取り組みを続けている心理カウンセラーから届いた現場のレポートと、高齢者の意外な心理を紹介する。

Updated by Sera Fuwa on May, 26, 2023, 5:00 am JST

高齢者も褒められたい

また「セラピストが寄り添ってくれたこと」もよろこばれました。家族と同居していても、介護の方がそばにいても、高齢者は寂しさを感じています。忙しく立ち働く現役世代にとって、昔話は退屈なもの。また高齢者自身も気を使って、存分に話を聞いてもらえる機会は多くはありません。お花あそびサロンの花*コミュニケーターは高齢者とコミュニケーションをとる心理学のプロフェッショナルだから、思う存分話ができて、それがポジティブ感情の増大に役立つのです。

また、下のグラフは「作品・工夫をほめられた」ことによる気分改善を示したものです。褒められると誰しも嬉しいものですが、高齢者にとって「褒められる」機会を提供するのがお花あそびサロンの役割でもあります。 

知己の友人よりも、知らない人と出会ったときの方が気分の改善は大きい

新しい出会いは高齢者にとってもまた刺激的であり、楽しいものです。しかも、すでに友人関係にある人よりも、知らない人と新しく出会ったときの方が気分の改善効果が大きいこともわかりました。気心知れた友人と楽しむことは有意義なのですが、知らない人と出会い交流することは、新しい刺激であり、楽しいことであり、社会とのかかわりを増やすことだからでしょう。

友人と参加したことによる気分の改善効果を示したものです。気分の改善効果が認められます。
「知らない人との交流」が気分の改善にもたらす効果です。なんとこちらのほうが気分改善効果が高いのです。

高齢者のフレイルは今後、さらに大きな社会課題になっていくことが予想されます。その入口となる「社会的フレイル」を予防し、生じるタイミングを少しでも遅らせることができれば、その分社会における幸せの総量は増えていくことになるでしょう。「お花あそび」に限らずとも、高齢者が心理的安全性を感じながらおしゃべりを楽しみ、五感を刺激しながら創造性を発揮し、新しい友人と出会う機会などを創出していくことが望まれます。

本文に引用しているデータ詳細はこちらの報告書に掲載しています。必要な方には実費にてお分けしています(送料・税込み3,870円)。
申し込み先:info@thera-labo.org