野口諒子

野口諒子

国際的な危機が増すなかで、クラウドは海外に依存したままの現状。高品質でリスクに強い「国内クラウド」を検討すべき

国家の危機管理の指標の1つに食料自給率があります。日本は長年、食料自給率が低い状況が続いていることはご存知でしょう。そうした状況下で、ウクライナ危機などによる国際的な食料の流通に変化が生じると、一気に食料品の値上げが進むことは、まさにいま多くの家庭や飲食店の方々が直面している課題です。

ここで視点を変えて、データを蓄積、利活用するクラウドに目を向けてみると、食料と同様に海外事業者への依存が高く、「クラウドの国内自給率が低い」ことがわかります。「食料は問題でも、クラウドなら問題ない」「米国のクラウドだから大丈夫」――そう言えるでしょうか。

Updated by Ryoko Noguchi on June, 8, 2023, 5:00 am JST

「国産」ではなく「国内」クラウドに注目

公正取引委員会の「クラウドサービス分野の取引実態に関する報告書」では、海外事業者の寡占が進む現状が報告されています。クラウドの中でもハードウェアインフラ設備を提供するIaaS(Infrastructure as a Service)およびOSやアプリケーションを稼働させるプラットフォームを提供するPaaS(Platform as a Service)の国内の市場規模と上位5社のシェアを分析したものです。2020年度の推計シェアは、AWS(Amazon Web Services)が40~50%、マイクロソフトが10~20%と大きなシェアを持ちます。3位にNTTコミュニケーションズが5~10%で入るものの、4位はGoogle、5位はセールスフォース・ドットコムという具合です。

こうした状況に危機感を覚える人たちも少なからずいるため、最近では「国産クラウド」を重視する必要があるという声も高まっています。このように一般にキーワードは「国産クラウド」であることが多いのですが、「国産」というとサーバーのメーカーまで日本企業であることを求めるといった解説を目にします。これは現実的には困難です。ハードウェアやソフトウェアまですべて国産とすると、選択肢が限られてしまいます。

Neutrix Cloud Japanでは、クラウド自給率を上げるためのキーワードを「国内クラウド」だと考えています。国内クラウドは、以下の2つの条件を満たすものと考えます。

■国内資本の国内事業者が提供するサービス
■データセンターが国内にあるサービス

この2つの条件を満たせば、クラウドが「国内」にあると考えられるのです。