松浦晋也

松浦晋也

(写真:JAXAデジタルアーカイブス / JAXA

生活や経済だけではない。人類は地球をマネジメントできる時代に

人類は衛星による地球観測という手段を得たことで「時間的にも空間的にも十分に高密度な」「全地球的な情報を」「継続的に」入手できるようになりつつある。これは、地球をマネジメントすることが可能になっていくことを意味する。人類の情報の使い方のヒストリーを踏まえ、これからの情報の使い方を探る。

Updated by Shinya Matsuura on June, 19, 2023, 5:00 am JST

情報には2つの使い方がある

地球観測は、地球を周回する軌道から、地球に関する情報を集め、分析する技術の総称だ。

情報には2つの使い方がある。
ひとつは、情報を秘匿すること。「より正確な情報を、自分だけが知っている」という状況を作れば、他者よりもより的確に行動することができ、競争に勝つことができる。

もうひとつは、情報を広く公開すること。「誰もが知っている」という状況を作れば、誰かが秘匿した情報に基づいて他者を出し抜いて利益を得るのを防ぐことができる。相手にとって知られては都合の悪い情報ならば、公開するだけで相手にダメージを与えることができる。それだけではなく、情報を共有することで共通の課題を認識し、協力することで、単独では対処できないような大きな問題に対処することが可能になる。

これに「正しくない情報/欺瞞情報」が加わると、情報の使い方はさらに多彩になる。欺瞞情報は秘匿しても意味がない。欺瞞情報を公開することで、相手の判断を誤らせて優位に立つことが可能になる。同時に、欺瞞情報に引っかからないようにするためにも、情報の公開が重要となる。正しい情報が公開されているならば、欺瞞情報と比較し、分析し、欺瞞情報を排除することが可能になる。

地球観測においても、この2つの使い方を見ることができる。偵察衛星の取得情報が機密指定により秘匿されるのは、前者だ。対してランドサットが長年観測し続けてきたデータが無償公開されているのは、後者であろう。