橋田浩一

橋田浩一

データ管理の中立性から考えるデータの民主化

中央集権型のAI(Centralized AI)と注意経済(Attention Economy)がさまざまな問題を引き起こしている。Google検索、ChatGPT、Amazonのレコメンデーションなどだ。これらが「科学的根拠に基づく選択の自由」さらに「民主主義あるいはデータによる価値の共創」を棄損している。この状況を打破する施策について説明する。

Updated by Koichi Hashida on June, 13, 2023, 5:00 am JST

監視資本主義 Surveillance Capitalism とデジタルレーニン主義 Digital Leninism

監視資本主義とは、個人が意図せずに提供したパーソナルデータの集中管理に基づいて、AIが個人に介入することを指す。2016年のイギリスのBrexitの国民投票、あるいはアメリカの大統領選挙などがこれに該当する。これらの投票の勝った方の裏側では、Cambridge Analyticaというイギリスの選挙コンサルティング会社が暗躍していた。Facebookの友達APIを使って、利用者の友達の情報を不正に収集し、マイクロターゲティングをかけていたのだ。この手法がさらに洗練されてくると、最終的に個人の投票をかなり左右してしまう、という懸念がある。

一方、デジタルレーニン主義はCentralized AIを使った権威主義的な統治のことを指す。典型的なのが中国で、中国の芝麻信用あるいは民間の信用サービスであれば個人は使わないという判断も可能だが、これらは政府が運用する社会信用システムなので、中国人はここから逃れられない。街中の監視システムも高度に発達している。

しかしこれらを国際協調で抑制するのは無理だろう。勝者を産むからだ。つまり特定の企業や国家に巨大な利益や覇権をもたらし得るので、核戦争や地球温暖化のように「勝者を産まない」ものとは決定的に異なる。従って話し合いが成立しない。