橋田浩一

橋田浩一

データ管理の中立性から考えるデータの民主化

中央集権型のAI(Centralized AI)と注意経済(Attention Economy)がさまざまな問題を引き起こしている。Google検索、ChatGPT、Amazonのレコメンデーションなどだ。これらが「科学的根拠に基づく選択の自由」さらに「民主主義あるいはデータによる価値の共創」を棄損している。この状況を打破する施策について説明する。

Updated by Koichi Hashida on June, 13, 2023, 5:00 am JST

オープン市民科学の社会実装を目指す

いろいろなサービス提供者から本人のデータが各個人のところに集約され、本人に集約されたデータを各個人の意思でサービスを設計したり、あるいは監査する人たちに開示することができるようになる。このとき重要なのは、AIの出力やサービスから各個人に対する介入に関するデータも含むパーソナルデータをデータポータビリティの対象にする、ということだろう。例えばChatGPTと会話するときに、ChatGPTの答えも含むパーソナルデータを本人の意思でいろいろな人に開示することができるようにすることだ。特に、サービスの設計者や監査者に開示することができる、という機能が重要になる。 それによって、このサービスを監査する人たち、例えばPersonal AIがいろいろな個人に対してどのように介入して、その結果、個人にとってメリットがもたらされているのか、あるいはデメリットが生じているのかということを分析し、その分析の結果、このPersonal AIあるいはサービスが本人の役に立っていないじゃないかという場合には改善させる、ということが可能になる。これは同時に商品やサービスの開発、人間や社会に関する研究、あるいは政策の立案と検証などに使うことができる。つまり世の中の基盤になるということを意味する。

ここで重要なのは、サービスの設計者、監査者に対しては天下りに権威が与えられているわけではなく、この人たちはお互いの分析結果のチェック&バランスを施すことで相互の社会的な信用を分権的に築いていくことになるということだ。これこそが民主的なデータの使い方ではないだろうか。

データの中立性は、個人がデータを持っていて、それをいろいろな事業者から中立な立場、つまり本人の立場でデータを管理している状態だ。それを自由に使える、中立であるからこそ自由に使える、本人のために使えて、かつサービスの監査にも使える、ガバナンスにも使えるということだ。

※この記事は、2023年5月31日に実施したオンラインイベント「データ民主化の方法論(Democratic Data Day Spring2023)」 における橋田氏の講演の一部を記事としてまとめたものです。映像は現在見逃し配信を実施しています。ご興味のある方はこちらのフォームから登録いただけると無料でご覧いただけます。
(Modern Times編集部)

参照リンク
世界最大級のプライバシー事件「ケンブリッジ・アナリティカ問題」とは何だったのか(プライバシーテック研究所)