木村守宏

木村守宏

データ処理のインフラの違いで10倍もの性能差。コニカミノルタが支援する、自治体の業務効率化

オフィスの複合機などのハードウェアビジネスがメインだったコニカミノルタ株式会社は、ソリューションに注力する方向をグローバルで打ち出した。従来はハードウェアの周辺商材として提供していたDXソリューションを、ビジネスの柱に育てる考えだ。コニカミノルタの国内ビジネスを担うコニカミノルタジャパンでも、2022年度にDXソリューション事業部を新設し、DXソリューションに注力する方向性を鮮明にしている。

Updated by Morihiro Kimura on September, 15, 2023, 5:00 am JST

自治体で進む、文書管理システムの導入

コニカミノルタジャパンが文書管理システムを導入した先行事例となるのが佐賀県だ。

佐賀県は「最先端電子県庁構築事業に係る情報化推進計画」に基づき、2009年からICTの活用による県民や職員の満足度の高いサービスの提供という情報化推進計画を基本方針にしている。「利用者の利便性向上」「行政業務の効率化」および「ITコストの削減」という3つの目標を掲げ、文書管理システムを含む職員ポータルシステム等の刷新を決定した。この構想をコニカミノルタジャパンが具体化し、先進的な職員ポータルシステム等を実現したのだ。

佐賀県の先進性の代表的な例として、職員ポータルシステム等(文書管理システムを含む)刷新にいち早く着目した情報システム化の考え方・体制が挙げられる。変革への障害は多いが、他の自治体でも文書管理システムの必要性を認めれば導入が進む。木村氏は「システム化後、実際に業務適用が進むと職員の負荷は減ります。人口減少で行政の人材も減ることが想定される中、多くの自治体が同様のシステムを使っていけば人材の相互補完も可能です。導入する自治体が増えていくと、システムの統合などに向けての動きが活発になるかもしれません」と横展開の可能性を指摘する。

コニカミノルタジャパンが自治体の文書管理システムの受注、構築を進めていく中で転機が訪れた。ある庁の案件で、もともとコニカミノルタ本体との関係があり派生案件としてコニカミノルタジャパンのソリューション部隊が文書管理システムの構築に取り組むことになっていた。ここでは当初、アプリケーションを構築して当初指定のデータセンターに格納してみたが、思うようにパフォーマンスが得られなかった。

大量データ処理のインフラの違いで10倍もの性能差

そこで国内にデータセンターを持ち、独自のソフトウェア技術を使って高性能なクラウドサービスを提供するNeutrix Cloud Japan(NCJ)の存在を思い起こした。木村氏は「NCJ社長の田口勉さんとは旧知の仲で、いつかNCJのクラウドサービスを使ってみたいと思っていたこともあり、パフォーマンスを確認させてもらいました」と語る。

既存のデータセンターとNCJのクラウドサービスを比較したところ単に移行するだけでパフォーマンスが10倍ほど上がるという大きな効果が得られた。この文書管理システムは、自治体のソリューションとしてはデータボリュームも大きく、システムの複雑性も高い。一方で、システムインテグレーター(SIer)が入って一から構築するほどの規模感でもないこともあり、パフォーマンスとコストのバランスの取れたクラウドサービスが求められた。木村氏は「NCJのクラウドサービスに、ストレージだけでなくコンピュートリソースも含めて移行することにしました。パフォーマンスが高く、低廉なコストで利用できるNCJのサービスと出会えて、助かっています」と評価する。

また現場で対応するエンジニアからも「海外事業者のクラウドサービスよりも安定していて、同じ品質ならば低コストで運用できる」とNCJのクラウドサービスは高く評価されているという。そのうえで木村氏は「自治体のソリューションで使うにあたってこだわっているのは、国内資本の事業者が国内のインフラで提供するサービスという点です。データが国内にあり、外に出ないことの安心感はさらに今後さらに不可欠になっていくでしょう」と指摘する。

NCJのクラウドサービスを利用したインフラは、その後、別の自治体の文書管理システムで採用された。また庁から派生した形で、ある研究機構にもNCJサービスを使った文書管理システムを提供している。