森本 裕子

森本 裕子

(写真:Martyshova Maria / shutterstock

既に答えは出ています。夫婦関係を良好に保つ「家計のスタイル」

長年議論の的となっているようなことでも、調査データを基にすでに「答え」が出ている事柄は少なくありません。夫婦の家計を分けた方がいいのか、統一した方がいいのかという問題もその一つです。

Updated by Yuko Morimoto on October, 31, 2023, 5:00 am JST

離婚率が高いのはどちら?

ということで、グラッドストーン氏は、長期にわたるイギリスの既婚カップル調査データを分析しました。家計を一つにしたあとに満足度が高くなるのか、満足度が高くなるとそのあと家計を一つにするのか、どちらなのかを識別しようというのですね。その結果、グラッドストーン氏らの予測通り、家計を一つにしたカップルは、翌年の関係満足度が高くなっていることが示されました。

だったら離婚率はどうだろう? ということで、既婚カップルを対象に家計を一つにしているかどうかを調査してから、12-14年後の離婚率を調べました。そしてまたまた予想通り、家計を別々にしていたカップルの12-14年後の離婚率は30.2%だったのに対し、家計を一つにしていたカップルの離婚率は24.2%と、家計統一カップルの方がその関係が長続きするという結果が得られたのでした。

無理やり口座を統合させても……

口座を一つにするのがいいというのはわかったとして、問題はその次です。無理やりカップルの口座を統合させても効果はあるのでしょうか。それとも、自分たちの意思で望んで統合するのでないと意味はないのでしょうか。

ということで、インディアナ大学のオルソン氏らは、口座を完全に分けていることを条件に、結婚直前または新婚1年以内のカップルに協力を依頼します※2。参加したカップルには、口座を統一するかどうかについて指示し、その後2年間、指示通りに口座を管理してもらいました。

口座統一の効果についてきちんと調べるため、比較対象として「口座について指示されなかった」カップルの関係満足度も調べてありました。まずはこちらのカップルの変化について見てみましょう。何も指示されなかったカップルの関係満足度は、時間が経つごとに低下していきます。この結果自体は、過去に行われた他の研究結果と同じです。ご存知のこととは思いますが、既婚カップルの関係満足度は、新婚から時間が経つと低下するのです。

では2年間、口座を分けたままにし、共有口座を開かないように指示されたカップルの満足度はどうだったでしょうか。すでにご紹介したグラッドストーン氏らの研究結果と一致して、口座を分けるよう指示され、実際に口座を分けたままにしたカップルの関係満足度は、やはり時間が経つごとに低下していました。

ところが一方、共有口座を新設してそれぞれ元々持っていた口座は使わないようにと指示されたカップルでは、関係満足度の低下が起こっていなかったのです。あらびっくり。いますぐ夫の口座を封鎖しようかと思ってしまいますね。どうやら、本人たちの意思ではなく、無理やり口座を統一しても、カップルの関係維持に役立つようです。