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(写真:Animedigitalart / shutterstock

生成AIとの付き合い方を考える

距離をとるにしろ、積極的に活用するにしろ、生成AIとの付き合い方を誰もが考えなくてはならなくなった。適切な判断をするためには、どのような考え方をすればいいのだろうか。ヒントとなる論考を、その本文の一部とともに紹介する。

Updated by on March, 15, 2024, 5:00 am JST

生成AIは「作者」を殺すのか。そもそもテクストは、作者のものだとはいえないかもしれない

「だれが話そうとかまわないではないか」
ChatGPTをはじめとした生成AIの話を聞くと、誰かがこのように言っているのではないかという気になってしまう。教育や文芸、音楽、ジャーナリズム、メディアなど多くの業界で議論が交わされてきた生成AIは、何をどのように変えようとしているのだろう。機械が人間に代わって文章を書いたり、絵を描いたりできるようになると、その「作品」は誰によって作られたものになるのだろうか。AIが「作者」なのか、それともそのソフトウエアを操作した人間なのか。誰が何を話そうと何も変わらないのだろうか。

システムの自己増殖は止まらない。私たちは巨大な社会実験を目撃している

テクノロジーとは「社会がモノの形になったもの」と我々は考える。
だが問題は、現実にはそもそも何のために技術を開発しているのか、よくわからないまま話が急展開しているケースも少なくないという点である。最近、生成的AIの開発競争の暴走の危険性を訴えるため、Googleの元副社長が職を辞したと報じられ話題になった。かの元副社長は、こうした技術が悪用されるのは必須だが、それを防ぐ手段が見つからないまま各社が開発競争に陥っている、と危機感を露わにしている。いうまでもなく、これは社会各所で沸き上がる懸念の一部に過ぎず、開発中止を求める世界的AI研究者の公開書簡や、ハリウッドの脚本家たちのストライキなど、連日似たようなニュースが紙面を賑わせている。社会がモノに化けたはずのテクノロジーが、その社会との関係が分からないまま暴走し始めているという危機感の表明である。

議論が進むアメリカのAI規制。実は、民間に対するAI規制は党派色の強い論点

米国では、民間に対するAI規制は党派色の強い論点であり(共和党は規制をすべきではないという自由放任姿勢であり、民主党は共和党と比較するとある程度規制を容認するという傾向がある)、尖鋭な党派対立を招くと思われるEUのAI Act案のような包括的なAI規制には踏み込めないでいる。対して大統領令は、行政府の長である大統領が各行政機関に対して命令をするというものであり、大統領令によって国民の義務を創出する新たな立法をするわけにはいかない(それは議会の役割である)。このような事情のもと、米国では、民間事業者に対して法的拘束力を有する包括的なAI規制を内容とする法令は作られてこなかった。

あなたの会社にCDOはいますか? 生成AIを活用するのであれば不可欠な役職

生成AIを配慮がないまま無節操に利用することは、顧客や取引先の反発を招く場合もあります。いわゆる「空気を読む」ことが求められるでしょう。法令遵守や適切な契約はもちろん、人々の感情における配慮も求められるでしょう。「技術的に可能な事」と、「利用者や社会が反発を抱くこと」の境界線は曖昧です。このような時代や感情の機微を読むことは、知見のある人間でなければ務まりません。あなたの会社が保有するデータは資産でもあり、預ける事に対する信頼でもあります。データ活用において成否を分ける存在となるCDOの役割は、今後より重要になるでしょう。

LLMが変えたPoC。今や企業は容易に実現可能性をはかることができるように

PoCとはProof of Conceptの略であり、その直訳は「概念実証」である。読み方は「ピーオーシー」あるいは「ポック」とされることが多い。日本語に訳すと理解しづらいかもしれないが、ようはアイディアが実現可能かどうか確認する検証作業のことである。PoCはAI業界や大企業で新規事業を担当する人々にとっては、既に一般的な用語となっている。

PoCを実行する理由は、LLM以前の世界ではAI開発には莫大な費用が必要だったからである。もちろんLLM開発自体がPoCの場合は、それ自体が莫大な費用を要する可能性がある。現在では、自然言語を扱う簡単なMVP(最低限の機能を実装したプロダクト)であれば、ChatGPTの機能を用いたGPTsで数時間程度で作成が可能になった。