今井明子

今井明子

2020年・東京。桜が開花した後に雪が降った。

(写真:佐藤秀明

関東の雪の予報が外れやすい理由

観測技術の発展により、気象学は大きく発展を遂げた。しかしまだ予報が難しい領域がある。その一つが太平洋側の雪についてである。未だもって外れやすい日本の雪事情について、サイエンスライターの今井明子氏が解説する。

Updated by Akiko Imai on January, 26, 2022, 0:00 pm JST

雪か雨か怪しい日に登場する謎のドーナツ

さて、冬に冷たい雨が降っているとき、みぞれ交じりの雨が降っているときに雨のレーダー画像を見ると面白いものが確認できるかもしれない。

天気図に表示されたブライトバンド
出典:気象庁HP

雨が強く降っているような表示(強い降水エコー)がドーナツのような形で出現するのだ。これは「ブライトバンド」と呼ばれている。強い降水エコーは本当に雨が強いのではなく、雪が解けて雨になっているところ(融解層)を示している。レーダーでは、融解層では強いエコーが出やすいという特徴があるのだ。レーダーは斜め上を向いて回転しているので、レーダーからのビームは逆さの円錐形の軌跡をたどる。その円錐形の、融解層のある高度の断面に円形に反応が出るのである。

雨か雪かはっきりしない天気にレーダー画像を見て、「あ、ブライトバンドができてるな」と思わずニヤニヤしてしまうのが気象予報士の性である。それでも、レーダーの観測精度が上がればいずれブライトバンドは表示されなくなっていくだろう。観測精度の向上は予報精度の向上にもつながるので、喜ばしいことではあるのだが、ブライトバンドが見えなくなるのは少し寂しいとも思ってしまうのだ。