松浦晋也

松浦晋也

2002年ごろ撮影。北極にある電波受信機。

(写真:佐藤秀明

宇宙からしかみえない真実がある

宇宙からは、地球上では見えないものが見える、いや感じられるーー。宇宙空間に打ち上げられたスキャナーは未知の発見に大きな貢献を果たしてきた。宇宙からの視点が持つ力を科学ジャーナリストの松浦晋也氏が解説する。

Updated by Shinya Matsuura on February, 9, 2022, 0:00 am JST

観測データから無人島がみつかる

「多波長で」「地表を撮影するのではなくスキャンする」——このMSSの仕組みは、そのまま地球観測センサーの原型となり、様々な形で発展していくことになるのである。

最初のEARTS衛星「EARTS-A」は1972年7月23日にアメリカ西海岸のバンデンバーグ空軍基地から「デルタ」ロケットで打ち上げられた。衛星が投入されたのは地球を南北に回る極軌道。「軌道高度910km、地方時午前9時45分、回帰周期18日の太陽同期準回帰軌道」である。極軌道は地球の自転と合わせて地球のほぼ全領域の上空を通ることができる。「スキャナー」たるMSSを積んだ衛星には大変都合の良い軌道だ。しかも軌道高度と軌道傾斜角(赤道に対して軌道がどれだけ傾いているかを示す角度)をうまく選ぶと、衛星直下の地方時がいつも同時刻になるようにすることができる。EARTS-Aの場合は午前9時45分。つまりいつ、どこの上を衛星が通過しても、撮影する直下の地方時は常に午前9時45分ということだ。

「地方時が同時刻」ということは地球中心に対する大陽と衛星のなす角度が同じということ。つまり、太陽光でできる影の条件が同じということになる。地表のスキャンは1回やればおしまいというものではない。何度も同じ場所を観測して、データを比較して経時的な変化を調べることも重要だ。その場合、太陽光の当たり方が同じだと、データを比較しやすくなる。

しかもこのような軌道では、何日かおきにおなじ場所の上空に戻ってくるようにすることもできる。これが「太陽同期準回帰軌道」だ。EARTS-Aが投入された「地方時午前9時45分、回帰周期18日の大陽同期準回帰軌道」というのは、「18日おきに同じ場所の上を、地方時午前9時45分に飛ぶ軌道」という意味なのだ。

見下ろした町並み
1969年撮影。エンパイアステートビルの最上階から見下ろしたニューヨークの町並み。

打ち上げ後、EARTS-Aは「ランドサット1(Landsat1)」と改名され、1978年1月まで5年半に渡って運用された。その間に得られたデータで、MSSのようなセンサーを搭載したランドサット1のような衛星——地球観測衛星の有用性は完全に実証された。広い地域の土地の利用データ、植生の分布、地形の詳細、さらにはその経時的変化を調べるのに、これ以上の道具はないほど便利だったのだ。

その象徴的な例がランドサット島である。1976年、ランドサット1の観測データから、カナダ・ラブラドールの沖合いに、未発見だった小さな無人島が見つかった。この島はランドサットのデータから見つかったことを記念して、ランドサット島と命名された。