松浦晋也

松浦晋也

(写真:JAXAデジタルアーカイブス / JAXA

データの徹底利用が真の国家安全保障につながる

前回、科学ジャーナリストの松浦晋也氏は、もはや人類は情報により地球をマネジメントできる時代であることを解説した。そのために大切なことは徹底した「データ利用」であるという。その意味・理由についてさらに詳しく綴る。

Updated by Shinya Matsuura on June, 21, 2023, 5:00 am JST

機密指定するよりも低コスト。データは公開する方向へ舵を切るしかない

これまで偵察衛星のデータは「公表してしまえば、どこまで見えているかが敵対勢力に分かってしまう」という理由から、機密指定を受けてきた。

しかし、「情報の公開」が「情報の秘匿」よりも簡単かつ低コストという時代になって、情報の秘匿にかかるコストはどんどん大きくなりつつある。トランプ前大統領が米偵察衛星のデータをTwitterにアップしてしまったように、非常に情報は漏れやすくなっており、しかも一旦漏れてしまえば情報を回収することはできない。速やかに複製され、拡散していく一方である。

偵察衛星のデータは、撮像データそのものと、「いつ、どこを撮影したか」のメタタグとから構成される。実はこのメタタグが重要で、これから「その国が何を狙っているのか」という情報を得ることができる。特的地域を集中的に観測していれば、「そこに注目している」ということが分かる、というように。

このうち、どこを撮影したかは、画像を見れば分かってしまう。「いつ撮影したか」は比較的隠しやすい。
現在の国際政治の状況下で、一気に公開するのは現実的ではないかもしれない。それでも少しずつ、偵察衛星のデータは公開していくべきだ。現在アメリカは過去のデータを徐々に公開している(参照:埋もれたデータの宝庫たる偵察衛星と、地球観測)現行の衛星であっても、メタタグをはずしたサンプルあたりから始めて、徐々にでもデータを公開していくべきである

「地球のマネジメント」という観点に立てば、偵察衛星と地球観測衛星に区別はない。いつの日か「地球を知るための情報」「地球をマネジメントするために必要な情報」として、統一して扱えるようにしていくべきなのである。

最後に、無料ないし低廉な価格で利用できる地球観測ブラウザーを掲載する。これらのページでは地球観測データを実際に閲覧したり、あるいは処理して情報を引き出すことができる。まず自分で地球観測データに触れてみるところから始めてみよう。
未来は自ら作っていくものだ。

参照リンク
・Sentinel Hub EO Browser https://apps.sentinel-hub.com/eo-browser/
・EarthExplorer https://earthexplorer.usgs.gov/
・Tellus https://www.tellusxdp.com/
・Planet Explorer https://www.planet.com/get-started/
・Axcel Globe https://www.axelglobe.com/ja