なぜ北風は寒いのか
では、なぜ北風が寒いのか(もちろん、ここでいう「北」は北半球における北のことである)。それは、先ほど説明した太陽から受け取るエネルギーと地球から放出されるエネルギーの収支でやはり説明できる。
実は、太陽高度が高く、太陽から最もエネルギーを受け取れるのが赤道だ。そして、緯度が高くなるほど太陽高度が低くなっていくうえ、冬には日が短くなる。極地に至っては冬はまったく太陽が昇らない極夜となる。だから、緯度が高くなるほど太陽から得られるエネルギー量は少なくなる。しかし、地球から放出されるエネルギーは、赤道であろうと極地であろうと同じだ。だから、「赤道は太陽エネルギー>地球から放出されるエネルギー」となるので暑くなり、極地は「太陽からのエネルギー<地球から放出されるエネルギー」となるので寒くなるのだ。
しかし、そのような状態のままであれば、赤道は年々気温が高くなっていく一方だし、極地は低くなっていく一方のはずだ。そうならないのは、大気や海が対流することで、熱がなるべくまんべんなくいきわたるようになっているからなのだ。その対流がさまざまな天気を生み出しているのである。
日本付近は、いわゆる「低気圧」と呼ばれる温帯低気圧がたびたび通過する。この温帯低気圧は、赤道からの暑い空気(暖気)と、極地からの冷たい空気(寒気)が出会うことで発生し、寒気と暖気の境目には前線ができる。北半球では低気圧が近づいて温暖前線が通過すれば南寄りの風が吹いて気温が上がり、寒冷前線が通過すれば北寄りの風が吹いて気温が下がる。つまり、「北風」は北極からの空気が低緯度にまで移動するから寒いのである。これを「移流」という。
ちなみに、気温の予測をする計算式のひとつにも、この移流が考慮されている。たとえば、A地点から〇km離れたB地点に〇℃の空気の塊があり、そこから風速〇mの風が吹いていたら、〇時後にA地点の気温は〇℃になるのか、という計算式である。