髙橋 信久

髙橋 信久

新潟県上越市の小さな村・中ノ俣での祭りの一コマ。この日には村を出ていった人たちが戻り、つかの間の賑わいを取り戻す。この地には伝統的な祭りの形が残っている。

役に立たないデータが、未来の資産になる

データ管理の常識はストレージの高性能化により変化していくだろう。理由はストレージの高性能化にある。ストレージの発達が未来のビジネスを変えていく可能性についてNeutrix Cloud Japanの髙橋CTOが語る。

Updated by Nobuhisa Takahashi on January, 4, 2022, 9:00 am JST

データを取り貯める基盤としてのNeutrix Cloud

それではNeutrix Cloudは、既存のクラウドサービスのストレージと何が違うのか。それを考えることでNeutrix Cloudの思想と価値を感じてもらえるだろう。

AWS(Amazon Web Services)などのハイパースケーラーのサービスで、ブロックストレージにデータを蓄積するケースを考えてみる。ストレージのパフォーマンスの1つで、ある条件の元で1秒間に読み込み/書き込みできる回数を示すIOPSは、標準的な契約では数1000のオーダーで、あまりパフォーマンスが高いとは言えない。Neutrix Cloudは標準のサービスでも1万6000というIOPSでストレージを提供している。ハイパースケーラーのサービスで1万6000のIOPSを実現しようとしたら、高額なオプションの契約が必要になる。

低コストで高いパフォーマンスを発揮するNeutrix Cloudのストレージ
低コストで高いパフォーマンスを発揮するNeutrix Cloudのストレージ

このように高いパフォーマンスを備えながら、Neutrix Cloudはギガバイト単価をハイパースケーラーのストレージを下回るコストで提供している。つまりNeutrix Cloudはハイパースケーラーのクラウドサービスよりも圧倒的な低コストで利用できるのだ。

もちろん、コールドストレージ、ディープアーカイブといったストレージの提供手法もあり、単純にコストを下げることは可能だ。ただしこの場合にはデータの処理の優先順位も下げることが必要で、すぐに利用したいデータの保管手法としては活用が難しい。データはただ蓄積してあるだけでは、単なるビット列でしかない。これを使いたいときにて適正なコストですぐに呼び出して、求める形で分析することによって情報の価値が生み出される。低コストですべてのデータを保管しながら、それをいつでも引き出して使えるようにすることが、データの民主化の1つのゴールであり、Neutrix Cloudが提供するクラウドストレージサービスの価値でもある。

実際に「処理できるストレージ」をいかに安価に提供するか。データの民主化を理想だけでなく、現実的なコストの観点からも後押しするクラウドストレージサービスが、マルチクラウド時代のデータの土台になることがわかるだろう。

最後に、なぜ「すべてのデジタルデータの保管」が重要かのもう1つの考察を添えておく。

AI技術などを活用したビッグデータ解析により、様々な価値が生み出されるようになってきた。しかし、現状のビッグデータ解析には課題がある。ビッグデータを基に分析するときは、いかに大量にあるといっても過去のデータを基に分析して未来を予測することになる。すなわち、過去の経験則に基づく分析であり、既成概念を超える分析はできないと考えられる。現状のビッグデータ解析の限界だ。

将来的により本質的なビッグデータ解析が可能になったとき、今まで想像できなかったアプローチで新しい価値が生まれる可能性がある。すなわち、今は解析しても価値がないと思われているデータであっても、将来には見えない価値を生みだす可能性があることの考察である。今のコストといった視点でデータを捨ててしまうということは、自らが持つ将来の価値を捨てることにつながるだろう。